研究課題/領域番号 |
15K21349
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
高野 聡子 東洋大学, 文学部, 准教授 (00455015)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 特別支援教育 / インクルーシブ教育 / 知的障害 |
研究実績の概要 |
本年度は特別支援教育の制度開始以後、国際社会とりわけ海外の学術雑誌において日本の知的障害教育のいかなる内容が発信され、どのように理解されているのかを検討した。またインクルーシブ教育が進展している国内において、インクルーシブ教育と知的障害教育がいかなる関係にあるのかについても検討した。 まず、特別支援教育は様々な障害を対象にした教育であるが、昨年度の研究によって日本の障害児教育はこれまで障害種ごとに教育内容と方法が考案され、実施されてきたという経緯が分析の視点として不可欠であることが明らかになっていた。そのため本年度は、様々な障害種の中から特別支援学校の設置基準学級数と在籍児童生徒数が最も多い知的障害に対象を限定し、アメリカの教育に関する論文データベースERICを使用し知的障害教育に関する論文を検索した。検索キーワードを①intellectual disabilities and Japan、②mental retardation and Japanとし、検索年を2007年以降とした。教育に関するデータベースを使用したにもかかわらず、結果として日本で学齢期に行われている知的障害教育に関する論文はヒットしなかった。すなわち海外の学術雑誌から日本の知的障害教育に関する論文を検索することは極めて難しい状況にあることが明らかになった。 次に、現在の知的障害教育の動向について明らかにするため、パイロット事業として展開されている公立の高等学校におけるインクルーシブ教育の視察を行った。視察した高等学校では、障害のない生徒と療育手帳を有する知的障害のある生徒がともに学んでいた。TT形式を導入し、教科や単元によって個別指導や少人数指導を行うなどの取り組みが行われており、高等学校においてもインクルーシブ教育が実践段階にあることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度に論文や学会発表からはわからない海外の研究者・現職教諭の日本の特別支援教育に関する関心と評価を明らかにするため質問紙調査の実施を計画していたが、研究を進めることによって、質問紙調査の実施よりも海外の学術雑誌の分析を進めることが不可欠であることが明らかになり、本年度はこれについて検討することができた。さらには本年度の研究によって日本国内、とりわけ日本の学術雑誌に掲載された英文論文がどのような内容をテーマにしているのかについて検討することが重要な課題であることも明らかになった。そのため当初の計画とは若干異なるものの、研究を進めたことによりあらたな分析の観点を得ることができている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度残された課題となった日本の学術雑誌における英文論文の内容と傾向について分析する。また、それに加えてこれまでの研究成果を踏まえて、国際社会で特別支援教育や日本型インクルーシブ教育のいかなる内容や情報が不足しているかを明らかにし、どのような内容や情報を、どのような方法で海外に発信したらよいのかについて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内旅費で宿泊費用を抑えることができたため、費用を削減することができた。次年度購入予定の図書に使用する。
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