研究実績の概要 |
平成29年度の研究は、研究実施計画を一部修正しつつ実施し、以下の成果を得た。 5、頬ひげ原基誘導と神経侵入を表現する数理モデルの構築:平成28年度までに、頬ひげ原基と感覚神経の接続を培養皿上で再構築する共培養実験法を開発した。このときの頬ひげ原基誘導は、研究代表者らによる羽毛原基誘導実験との共通性が観察されたため、羽毛原基誘導に関する数理モデル(Ishida & Mitsui, APL Bioengineering 2, 016107 (2018))を応用できると考えられた。しかし、神経線維の接続に関しては、改良または別のモデルを用いる必要があると考えられた。 6、頬ひげ原基誘導場のパターン形成制御に関わるシグナル経路・遺伝子の探索:感覚器官としての頬ひげ原基において、Merkel cell-neurite complex(M-N複合体)の形成が重要であり、すでに神経線維とメルケル細胞を免疫組織化学的に確認していた。そこでさらに、成熟したM-N複合体で観察されるシュワン細胞について解析した。その結果、頬皮膚と三叉神経節の器官共培養によって形成したM-N複合体で、Nestin、SOX2、SOX10陽性のシュワン前駆細胞が観察された。以上から、再構築されたM-N複合体は神経、メルケル細胞、シュワン細胞で構成されることが明らかとなった。 本研究計画を通して(1)頬ひげ原基の器官培養法と(2)三叉神経節の器官培養法を開発し、これらを組合わせて(3) M-N複合体を培養皿上で形成させる独自の実験法を開発した。また、これらの実験法を用いて(4)頬ひげのメルケル細胞の自律的分化、(5)三叉神経伸長のNGFの必要性を示した。さらに、(6)頬ひげ原基のメルケル細胞周辺にシュワン前駆細胞が存在し、M-N複合体の形成に寄与している可能性を示した。これらの研究成果の一部を学術論文にまとめて投稿中である。
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