研究課題/領域番号 |
15K21353
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
肥田 拓哉 青山学院大学, 理工学部, 助教 (70748326)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 科学教育 / 技能訓練 / 塗装作業 |
研究実績の概要 |
本年度の計画である塗装作業における熟練者の技能の形式知化を進めるため,協力企業における現状調査を行ったあと,(1)熟練者の動作パターンの抽出,(2)熟練者の動作の大局的な特徴の抽出,(3)熟練者の動作の詳細な特徴の抽出を実施した. (1)に関して,熟練者の塗装作業をビデオ分析し,製品の端を塗装する動作(端塗装動作),スプレーガンを左右に振りながら製品を塗装する動作(横振り動作),スプレーガンを上下に振りながら製品を塗装する動作(縦振り動作)の3つに分類した.次にこの3つの動作を対象として,熟練者の塗装作業をモーションキャプチャシステムで計測し,熟練者の動作とスプレーガンの動きを記録した.(2)に関して,(1)の結果をもとにして動作の大まかな特徴を抽出した.具体的には作業者の関節角度の標準偏差から身体各部位の運動を明らかにし,さらにそれをもとに主成分分析により動作を評価した.その結果,横振り動作は右腕の肩関節と手関節の動作が主であること,身体各部位の動作は連動せず右腕の動作が独立していることが明らかとなった.(3)に関して,熟練者の動作とスプレーガンの動きについて,(A)動作の振り幅,(B)スプレーガンの回転角度,(C)移動速度,(D)スプレーガンと製品の距離の観点から分析した.その結果,熟練者は規則性のある動作をしていることが明らかとなった.具体的には,(A)(C)(D)についてはばらつきが小さくほぼ一定であることに対し,(B)については製品の端で移動方向を反転させるときには大きくなった.このような動作となったのは,製品全体で塗膜の厚さをできるだけ一定にするためであると考えられる.これについては平成28年度の研究計画に沿って明らかにする予定であり,平成27年度は塗膜の厚さに関する簡易的な検証まで実施し,ここまでの成果について国際会議APIEMS2015にて発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は計画していた通り,塗装作業における技能を形式知化した.具体的には,協力企業における現状調査,および熟練者の動作とスプレーガンの動きを対象とした技能の定量化を実施した.また,製品の塗膜の厚さに関する簡易的な検証まで実施し,次年度の研究内容を一部先取りした.なお,ここまでの成果については国際会議APIEMS2015にて"Visualization of Skilled Worker’s Motion and its Effect on Product Quality in Painting Operation to Metal Plate"として発表した.このような理由から,おおむね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究については,当初の計画に沿って進める予定である.具体的には,塗装品質に影響を与える作業条件の明確化を行った後,技能訓練システムの開発を行う.塗装品質については,塗料を吐出するスプレーガンの作業条件を組み合わせた実験を行い,定量化する.作業条件は先行研究で示されている条件のほか,協力企業の知見も含めて検討する.塗装品質とスプレーガンの作業条件の関係が明らかになることで,技能訓練システムの基礎となるコンピュータ上でのシミュレーションが可能となる.技能訓練システムについては,(1)技能評価,(2)技能診断,(3)訓練実施の3つの要素を含み,①熟練者の動作との一致率の評価,②塗装品質レベルの評価,③手本となる作業動作のリアルタイム表示,④熟練者の技能を習得するためのアドバイスの表示の4つの機能を有するシステムとする予定である.訓練者の動作とスプレーガンの動きについては,モーションキャプチャシステムを用いることで正確な値が取得可能である.しかし,技能訓練システムの使い勝手の観点から,簡易的な方法の検討も必要である.そのため技能訓練システムの構築に向けて,モーションキャプチャシステム以外のモーションデータの取得方法の検討も進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
データ解析ソフトウェアの購入に充当する予定だったが,別のソフトウェアで代替したため.
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次年度使用額の使用計画 |
技能訓練システムの開発に関わる機器の購入に充当する予定である.
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