昨年度に引き続きレーザスポレーション試験によってDLC膜のはく離を実現させるために,同一箇所に繰り返しレーザを照射できるシステムを構築した.しかしながら,DLC膜の膜厚が1μmと薄いことからレーザ照射回数を増やすだけでは,DLC膜のはく離に至る界面応力を負荷できずはく離は実現しなかった.そこで,本年度は主に熱衝撃試験,および繰り返し圧子圧入試験を行うことで,DLC膜の高温環境下での密着性状を評価した. 熱衝撃試験に関しては,DLC膜の酸化を防ぐために耐熱ガラス管を用いて試験片を真空封入した後,電気炉にて610℃まで加熱後,20℃の水にて急冷することで,DLC膜/基材界面に急激な熱応力を作用させた.この熱衝撃試験をはく離が確認されるまで繰り返すことでDLC膜の密着性状を評価した.また,熱衝撃試験中に界面に作用する熱応力を有限要素解析によって算出することで,密着性状の定量化を試みた.試験後のDLC膜は界面はく離以外にも表面損傷が発生したため,表面損傷面積とDLC膜の構造変化との関係性を明らかにした.これにより,一般的にガラス成形が実施させる600℃以上の高温環境下での密着性状すなわち金型耐久性(金型寿命)の評価が可能となった. 一方,繰り返し圧子圧入試験においては,既存の押し込み試験機に試験片加熱機構を取り付けることで,300℃程度までの高温環境下における試験を実現した.また,はく離発生の瞬間をとらえるために,アコースティックエミッション(AE)法を併用できるシステムを構築した.さらに,有限要素解析によってはく離発生時にDLC膜に作用するせん断応力と熱応力をそれぞれ算出することで真の密着強度を推定した. 以上の内容から,本研究課題の主目的であるガラスモールド成形に用いられる金型離型膜であるDLC膜の高温密着性状(はく離寿命)の評価が可能となった.
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