研究課題/領域番号 |
15K21355
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
香川 秀太 青山学院大学, 社会情報学部, 准教授 (90550567)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 越境 / 対話 / コミュニティ形成 / 創造 / 社会的交換 / アソシエーション / マルチチュード / 活動理論 |
研究実績の概要 |
本研究は,既存の集団の枠(境界)を越え,異質な人々が緩やかに繋がり学び合い,時に組織変革や社会変化を目論む「越境活動」に焦点を当て,その内実の解明,実践的改善,理論構築を行うものである。具体的な対象としては,越境が求められている,あるいは活発に起こっている,A)職場,B)職場外,C)社会活動の三つの種類のフィールドを選定し,そこで面接や観察による調査,アクションリサーチ(実践研究)を行い,それらを統合して越境に関する体系理論を構築,アドバンスさせることを目的とするものである。 本年度はまず,A)職場でのフィールド研究として,ある職場で,外部研究者と現場の人々の間,異部署の間で,職場環境を改善する知識創造の対話実践(アクションリサーチ)の成果をまとめた論文を執筆し発刊された。異部署間の対話過程で見られる視点のズレや変容,文化的自明性の揺らぎ,動機や主体性等の変化を明らかにした内容の論文であった。次に,B)職場外にて企業人が,NPO法人の支援や相互に共同活動を行うプロボノについての研究成果のデータ収集やその途中成果に関して学会発表を行った。そして,C)貧困層や学校にあまりなじめない子どものためのコミュニティづくりを行っている社会活動に関する観察やアンケート調査,実践開発を行った。その際,それまで行ってきた反原発デモの調査研究で導き出した諸理論を活用しさらにアドバンスさせた。さらに,本年度は,ビゴツキーの心理学理論だけでなく,アントニオ・ネグリや柄谷行人らの哲学,社会関係資本論,社会学系のネットワーク論等についての理論研究をすすめるとともに,調査研究の諸結果や諸事例を用いながら,それらの接点を探り,越境論をアドバンスさせうる理論的視点を研究した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査研究,実践開発,理論研究,それらの途中成果の発表や,書籍化,論文化などおおむね順調に進んでいる。また,社会人や研究者向けの雑誌にて越境概念について特集が組まれるなど,研究内容をより一般向けに報告する機会を得た。また,日本質的心理学会にて,越境活動に関する特集を組むことになりその編集を担当することになった。
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今後の研究の推進方策 |
取り組んでいる調査や実践開発を継続するとともに,それらの成果を各種学会にて論文投稿や学会発表を実施していく。その際,本プロジェクトの目標の一つである越境活動に関する体系理論を構築してその内容を論文や図書にてまとめる。さらに,社会活動や職場外の実践を行っている各種民間団体や人々と新たにネットワークを形成し,次の研究につなげていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
1万円弱の残額であり,概ね計画に即していると考える。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は,カナダでの国際学会や,関西や関東での調査,収集データの文字化の業務委託,書籍等の文献資料や調査や分析にかかる物品購入を予定している。
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