研究課題/領域番号 |
15K21358
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
秦 若菜 北里大学, 医療衛生学部, 助教 (50448958)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 吃音 / リハビリテーション / リハビリテーション効果 |
研究実績の概要 |
吃音とは、音や語の繰り返し、ブロックと呼ばれる発話の中断などを主症状とする発話の障害の一つで、流暢なスピーチを達成する呼吸・発声・構音の協調性の破綻に起因することばの流暢性の障害と定義されている。成人の吃音者は発話や自身に対して無力感、欲求不満、怒り、絶望といった感情を抱くことが少なくない。こうした心理的負担は社会的な活動制限や参加制約を伴い、QOLの低下につながっている。本邦では言語聴覚士による成人吃音者のリハビリテーションを行う事ができる施設は少ない(原 2009)。また、治療効果に関する研究は1~2症例を対象とした臨床的事例研究に限られており、エビデンスレベルの高いグループスタディは行われていない。 そこで、本研究では多症例を対象に下記の2点を明らかにすることを目的として研究を進めている。 ①言語聴覚療法の有効性を明らかにする:吃音者に対し統合的アプローチを用いたリハビリテーションを実施し、実施前評価・中間評価・実施後評価を比較して、吃音の症状および吃音者自身の主観的な評価に変化がみられるのか、その変化はどの程度であるかを検証する。 ②治療効果に及ぼす影響を明らかにする:吃音者の吃音重症度およびその他の背景因子(性別、年齢、自己評価値、社交不安の程度など)とリハビリテーション実施期間・回数・症状の変化との関連性の有無を明らかにする。 本研究を実施にするにあたって、平成28年度は主に文献等資料の収集、関係者との協議・相談、リハビリテーション実態の調査、倫理審査申請書の作成等を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は研究の実施にあたって、その研究計画の策定・研究準備を中心に行った。主に、①研究手続き・流れに関して関係部署内での調整、話し合い ②倫理審査申請書の作成 に多くの時間を費やした。現在、対象者のリクルートを開始する準備が整い、倫理審査の申請中であるため、倫理審査の承認後には速やかに研究を推進することが可能である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度 北里大学医学部・病院倫理委員会に倫理審査承認後に①対象者のリクルート ②対象者に関する基本情報の収集、初回評価およびリハビリテーション実施3回目終了時評価、リハビリテーション終了時評価の検査データの収集 ③リハビリテーションの実施に関するデータの収集 ④評価時に録音した録音データの解析を行う。 ①対象者のリクルート:対象者の選択基準は吃症状を主訴として北里大学東病院を受診し、吃音と診断された15歳以上の者。吃音の発症は学齢期以前である者とする。目標対象者数は50名である。②基本情報・評価の検査データの収集:基本情報として、年齢、性別、職業、主訴、発症時期、家族歴を収集する。検査は吃音症状の測定として「吃音検査」、吃音の自覚症状に関する調査として「吃音のある人の発話場面への反応に関する自己評定」、社交不安の評価として「Liebowitz Social Anxiety Scale 日本語版(LSAS-J)」を実施する。吃音検査は実施時の音声を録音する。③リハビリの実施に関するデータの収集:リハビリを実施した期間とその回数を集計する。④音声データの解析:録音した音声を音声分析ソフトを用いて音声波形と狭帯域スペクトログラムを表示の上、症状の頻度(%)と症状最長持続時間(ms)を測定する。
平成30年度 ①評価時の検査データの収集 ②リハビリテーションの実施期間およびその回数の集計 ③評価時に録音した録音データの解析 ④統計学的解析・検討を行う。①~③は平成29年度からの継続作業である。 統計学的解析はリハビリテーション実施後の吃症状を主要アウトカム評価項目として、リハビリテーション実施前後の吃頻度および吃症状持続時間を比較し、リハビリテーションの有効性を検討する。また、副次アウトカム評価項目を①治療効果に影響を及ぼす因子の推定 ②治療過程中評価からの予後予測 の2点とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は研究の実施にあたって、研究手続きに関しての関係部署内での調整や話し合い、倫理審査申請書の作成に多くの時間を費やしたため、研究の進度に若干の遅れが生じた。そのため、検査データの解析を平成29年度に実施することとした。これにより、平成28年度は解析にかかる人件費が生じなかったため、その分の費用が平成29年度に繰り越された。
|
次年度使用額の使用計画 |
物品費として、検査データおよび音声データ保存のための外部記憶媒体(USBメモリー)他文房具等消耗品を購入予定である。旅費として、学会発表および調査のために使用予定である。人件費・謝金として、主に音声データの解析に関わる人件費を支出する予定である。
|