研究課題
27年度に山中4因子を微小乳頭肺腺癌細胞株に導入することで作製した癌幹細胞様細胞(MPPAC-4F)とその親株(MPPAC)のタンパク質発現を二次元電気泳動法にて比較した結果、発現量に1.2倍以上の差を認めた96個のタンパク質スポットを検出した。28年度はまずこれらのタンパク質スポットを質量分析装置を用いてタンパク質を同定した。その中で、MPPAC-4F細胞で高発現していたCofilin-1、NAP1L1、ARF1、ZFAND3について、肺癌組織マイクロアレイを用いて肺腺癌における発現を免疫染色法にて評価した。Cofilin-1は核陽性症例と分化度に関して有意な相関が認められた。また、NAP1L1発現は分化度、腫瘍径、病理学的ステージ、胸膜浸潤、リンパ管浸潤、血管浸潤と有意な相関が認められた。さらに、ARF1発現はリンパ節転移とリンパ管浸潤で有意な相関が認められた。一方、ZFAND3発現は臨床病理学的因子と有意な相関が認められないものの、ZFAND3高発現群が低発現群に比して予後不良であることが分かった。多くの臨床病理学的因子との高い相関性を示したNAP1L1発現について、予後との関連を調べるため、多数例の新たなコホートにおける肺癌組織を用いてNAP1L1発現を検証した。その結果、肺癌組織マイクロアレイを用いた場合と同様にNAP1L1発現は分化度、病理学的ステージ、リンパ節転移、胸膜浸潤、リンパ管浸潤、血管浸潤と有意な相関を示した。また、肺腺癌症例をNAP1L1染色スコアの中央値を境に2群に分けて予後を評価したところ、NAP1L1低発現群に比して、高発現群では有意に予後不良であった。さらに、COX比例ハザード回帰モデルを用いた多変量解析の結果、NAP1L1発現は独立した予後不良因子であることも分かった。
3: やや遅れている
癌幹細胞様細胞を用いたプロテオーム解析の結果、両者で発現量に差のあるスポットを同定し、いくつかのマーカー候補タンパク質を検出した。その中でNAP1L1はその発現が各種臨床病理学的因子と相関しており、予後不良とも関連していることが明らかとなり、多変量解析の結果からもNAP1L1が独立した予後不良因子であることが示された。実験計画では選出された分子について、増殖能や浸潤能、遊走能などをsiRNAを用いた実験により評価する予定でいたが、そこまでには至らなかった。
29年度はNAP1L1やその他のマーカー候補分子について、組織診断だけでなく、血清診断マーカーとしての有用性も併せて検討していく。さらに、NAP1L1をはじめとしたマーカー候補分子が肺腺癌の悪性度や予後と関連するメカニズムについても検討を進めていく。
siRNAを用いた検討まで行うことが出来なかったため次年度使用額が生じている。
使用計画として、29年度はsiRNAを用いたNAP1L1の機能性評価、並びに、NAP1L1の血清診断マーカーとしての有用性に関しても併せて検討する。そのためのsiRNA実験関連試薬やRPPA法に関連した消耗品に使用する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (10件)
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