研究課題
2017年度までの研究において癌幹細胞様細胞(MPPAC-4F)とその親株(MPPAC)の二次元電気泳動法を用いたプロテオーム解析により、MPPAC-4F細胞で高発現していたNAP1L1を見出し、193例の肺癌組織を用いた免疫染色により肺腺癌において、分化度、腫瘍径、病理学的ステージ、胸膜浸潤、リンパ管浸潤、血管浸潤と有意な相関が認め、さらに独立した予後不良因子であることが分かった。本年度はNAP1L1発現と肺腺癌における悪性度との関係を明らかにすることを目的として、siRNAを用いてNAP1L1の発現抑制実験を行った。初めにsiRNA処理条件の至適化を行うため、リアルタイム定量RT-PCR法、並びにウエスタンブロット法による確認を行い、NAP1L1の発現が十分に抑制される処理濃度と処理時間を決定した。次にその条件を用いて、細胞の増殖能を測定するためのMTSアッセイと細胞の遊走能(運動能)の変化を調べるためのWound healing assay(創傷治癒アッセイ)を行った。MTSアッセイでは、NAP1L1発現を抑制していないコントロール細胞に比して、NAP1L1の発現を抑制した細胞では有意な増殖速度の低下を認めた。また、創傷治癒アッセイでは、コンフルエントな状態の単層培養細胞に一定の幅の引っかき傷をつけ、その後、傷の修復具合を測定し比較したところ、コントロール細胞に比べNAP1L1の発現を抑制した細胞では有意に遊走能が低下していた。これらのことから、NAP1L1は肺腺癌の診断マーカーとしてだけでなく、増殖能と遊走能に直接的に寄与している可能性が示唆された。さらに、NAP1L1はMPPAC-4F細胞の培養上清タンパク質を用いたウエスタンブロット法の結果から、培養上清中へのNAP1L1の分泌が確認され、今後、血清診断マーカーとしての有用性についても検討していく。
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