メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA)は、医療関連感染の主要な原因菌として世界的にも問題となっており、適切な抗菌薬治療を早期に行う為にも、迅速診断方法の確立が必要とされている。そこで今回我々は、バクテリオファージ由来の尾部吸着タンパクの高い特異性と親和性に着目し、新たな検出方法を確立すべく検討を行った。 これまでの研究結果より、バクテリオファージ由来吸着タンパクを用いた黄色ブドウ球菌検出系を構築すべく検討を行い、約15分で検出可能なラテラルフローアッセイ法を確立した。まず、確立した検出法の特異性を評価する為、他菌種との交差反応性を評価した。黄色ブドウ球菌と同属であるStaphylococcus属の7菌種、その他のグラム陽性菌である11菌種、グラム陰性菌の3菌種、真菌の1菌種を用いて試験を行った。その結果、試験を行った15菌種すべてにおいて偽陽性反応は認められず、本法の黄色ブドウ球菌に対する高い特異性が確認された。続いて、臨床分離株の黄色ブドウ球菌32株を用いて、本法とモノクローナル抗体を用いたPBP2’検出系による判定結果から、MRSAとメチシリン感性黄色ブドウ球菌(MSSA)の鑑別が可能か検討を行った。その結果、27株がMRSA、5株がMSSAと判定された。これらの結果は、PCR法によるfemA遺伝子及びmecA遺伝子を標的とした判定結果と完全に一致し、検査精度の高さが確認された。
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