研究課題/領域番号 |
15K21362
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
伊藤 雅洋 北里大学, 薬学部, 助教 (90596727)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プロバイオティクス |
研究実績の概要 |
Lactobacillus casei ATCC 27139の自然免疫賦活化に関わる菌体因子および免疫賦活化に関わる宿主レセプター分子を推測するため、マウス脾細胞(7.5×10 5 cells/ml, C57BL/6N)および野生株加熱死菌体(ATCC27139-ICW: 15 μg/ml)を3日間共培養し、TNF-α発現量をELISAにより計測した。その際、貪食阻害剤(Latrunculin B)またはCa2+キレート剤(EGTA)を同時添加し、同様に計測した。 野生株のみを添加した際に認められたTNF-α発現亢進は、貪食阻害剤およびCa2+キレート剤を添加した際には認められなかった。また、野生株の菌体表層構造を取り除いたペプチドグリカン(ATCC27139-PG)または免疫賦活化欠失株の加熱死菌体(MT77-ICW)と共培養した際にもTNF-α発現亢進は認められなかった。以上のことから、マクロファージなど貪食細胞による貪食およびATCC27139の菌体表層構造が自然免疫賦活化には不可欠であると示唆された。一方、ATCC27139による自然免疫賦活化には Ca2+が関与することが示唆された。したがって、ATCC27139 の自然免疫賦活化には菌体表層構造の構成因子と宿主C型レクチンレセプターとの結合が不可欠であると推察された。 そこで、菌体表層多糖構成成分であるガラクトース、ラムノースまたはグルコースを同時添加し、同様に計測したところ、野生株のみを添加した際に認められたTNF-α発現亢進はラムノースを添加した際にのみ有意に低下した。以上のことから、ATCC27139 の自然免疫賦活化には菌体因子としてラムノースが関与することが示唆され、ATCC27139の自然免疫賦活化には宿主のラムノース結合性C型レクチンレセプターが関与することが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス脾細胞を用いた競合阻害解析により乳酸桿菌による自然免疫賦活化に不可欠な菌体因子を同定し、研究項目1 を達成した。現在は研究項目2である自然免疫賦活化に関わる新規宿主レセプターの同定については、同様にマウス脾細胞を用いた試みており、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
研究項目2である自然免疫賦活化に関わる新規宿主レセプターの同定について引き続き実験を行うとともに、予定通り菌体表層多糖についても構造の決定を試み、菌体表層構造と自然免疫賦活化作用との関連を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究内における重要性、および使用予定機器、実験協力者の都合から平成28年度を予定していた研究計画3であるin vitro における宿主レセプターの解析を先んじて始めたのとともに、研究計画1である自然免疫賦活化に関わる菌体表 層構造の解析を平成28年度に行うこととなり、結果使用予定分との相違が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の消耗品費 (1,460千円) は想定している。内訳は以下の通りである。 実験動物購入費等に500千円、菌体構造解析用試薬等購入費に360千円、細胞培養用試薬等購入費を200千円、および一般試薬および培地等購入費に400千円を想定している。 また、今年度は学会発表用旅費国内旅費 (100千円)、外国旅費 (250千円) 、論文校閲料 (150千円) および論文投稿料 (300千円) にも使用予定である。
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