研究課題/領域番号 |
15K21365
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
山田 洋平 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (60383816)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マイクロアレイ / 抗ドナーHLA抗体 / Luminex / 肝組織線維化 |
研究実績の概要 |
マウスの肺毛細血管内皮細胞と肝臓類洞内皮細胞を単離し、それぞれを抗MHCクラスI抗体(1 micro-g/ml, 10micro-g/ml)と培養し、mRNAをマイクロアレイで網羅的解析を施行した。肺毛細血管内皮細胞、肝臓毛細血管内皮細胞のそれぞれで、遺伝子発現が2つの異なる濃度において共通してコントロールに比べて8倍以上認められるものを選定し、解析を施行中である。マウスを用いたvivo実験では、開腹下に、下大静脈もしくは門脈から抗MHC-class I抗体の注入を行い、肺と肝臓での組織学的評価を行った。
また、人検体では肝臓移植後のレシピエントの抗ドナー抗体陽性率を調べ、その抗体の特性、抗体の強度、肝臓組織の変化との関係を解析中である。 対象症例の移植時年齢は中央値1.4歳(0.2-17.5歳)で、検査時の移植後経過年数は中央値8.4年(1.0-19.1歳)であった。グラフトの組織評価では門脈域線維化(F1以上)を27例、肝細胞周囲性線維化(mild以上)を34例に認めた。Flow-PRA法による抗HLA抗体はClass I抗原に16例、Class II抗原に26例で陽性、両方陽性は12例であった。FCXMによる抗ドナー抗体はT細胞に16例、B細胞に30例で陽性であった。Flow-PRA法によるClass II抗体の有無は有意に肝細胞周囲性線維化と関連しており、Class II抗体陽性26例中25例(96.2%)で肝細胞周囲性線維化を認めた(P = 0.003)。また、FCXM による抗ドナーB細胞抗体のフローサイトメトリーの吸光度の程度は、肝細胞周囲線維化の程度と中等度の正の相関を認めた(r = 0.45, P = 0.003)。なお、Class I抗体の有無や抗ドナーT細胞抗体の有無と、門脈域線維化・肝細胞周囲線維化に関しては有意な相関が認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺及び、肝臓毛細血管内皮細胞のvitroでの培養検体をマイクロアレイで解析し、その遺伝子パターンを分析しており、ターゲットとなる遺伝子の絞り込みに成功した。 それらの遺伝子の役割と、生体内で観察される抗体関連型拒絶反応との結びつけを行っていく。 しかしながら、当初予定していた、vivoでの生体反応が文献通りに再現できない為、抗体の投与量や前処置を適宜変化させながら検証していく必要がある。
一方、ヒト検体では、30例程度の血清を用いて、抗体陽性率(クラスI, II別に)を解析済みである。 特にクラスIIの陽性率がグラフト障害との相関が認められた。
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今後の研究の推進方策 |
動物実験では、vitroで絞り込みを行った遺伝子発現が、vivoでの臓器の遺伝子発現と相関が見られるかどうかを検証する。vivoでの期待された生体反応誘導の為に、抗体の投与量や前処置(LPS投与量)などを調節する予定である。
ヒト検体での解析は、移植後のワンポイントでの抗体陽性率の検出は終了したので、経時的な抗体の強度を比較する目的で、luminexを用いての定量的な数値の収集を予定している。
更に、その強度がどのように変化していくのかを、免疫抑制剤の調整などがその強度にどう影響していくのかを解析していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物のvivo実験において、当初期待していた生体反応が誘導できておらず、その後の実験が困難であったことが、理由の一つである。 文献的(3-4の報告があるが)には、LPSによる前処置の後に、抗体を注入する事で、著明な肺水腫を誘導できる筈であるが、その誘導に成功していない。
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次年度使用額の使用計画 |
vivo実験では、抗体投与量や前処置のレジメを変更させて、実験を進めていく予定である。試薬の購入は終了しているため、動物の購入資金として予定している。 また一方で、ヒト検体での定量的抗体測定の費用配分を増加させ、解析を進めていく予定である。 1検体¥35000であり、20検体程の測定(計¥700,000)を予定している。
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