本研究は、東アジアにおける医学の近代化の構造を明らかにすることを目指した。具体的には、日中戦争期の中国で開設された中国伝統医学の病院(蘇州国医医院)における医療の実践、20世紀初頭に欧米から興隆した全体論的医学medical holismが日本の医学に与えた影響(自家中毒・体質医学)について考察した。個々の事例を分析するにあたっては、医学の社会的役割と、臨床における理論と技術の再構築、疾病の社会的文化的表象という視点を重視した。こうしたアプローチを通して、近代過程における医学知のグローバルな伝播と、東アジアの人々の病経験や身体観とを結び付けるという目的を達成することができた。
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