亜硝酸ガス(HONO)は、人体に有害な光化学オキシダントを生成するヒドロキシルラジカル(OH)の主要な前駆物質であると同時に、HONO自体が健康に悪影響を持つ非常に重要な物質である。それにも関わらず、その発生源の全貌が未解明である。私は、土壌、特に、窒素施肥量が多く、抜水により、窒素の化学形態が一気に硝酸態へと変化する水田土壌を研究対象とした。まず、水田土壌を採取し、ポットを設置し、HONOの発生を確認した。HONOの発生には、温度、土壌水分量、pH、土壌中の亜硝酸態窒素、硝酸態窒素、アンモニア態窒素の量が関係していると予想された。アンモニア態窒素の量がHONOの発生量に正の影響を与えると考えた為、窒素施肥量を変化させてみたが、予想した効果はえられなかった。室内のポット試験で水田土壌からのHONOの発生係数を計測した。 また、菌叢の塊である活性汚泥を用い、条件をコントロールしやすい室内に於けるポット試験を行い、HONOが発生しやすい条件を探った。これは、土壌よりも、活性汚泥のほうがHONOを発生させるメカニズムが、化学的なプロセス、また、生物的なプロセスによるものか明らかにしやすいと考えた為である。そのため、菌を滅菌した状態で、HONOの発生量を調べた。その結果、HONOの発生量は著しく減少し、生物的なプロセスが主な要因であることがわかった。また、生物的なプロセス中、硝化細菌によるHONO発生量と脱窒細菌によるHONO発生量の比較を行った。硝化細菌の好む好気条件、脱窒細菌の好む嫌気条件と、条件を変化させた場合のHONO発生量の変化を調べた。好気条件でHONO発生量が多かったが、好気条件が続くと、HONO発生は止まった。嫌気条件を経ることが重要であるとわかった。その結果を学会で発表する予定である。
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