「紛争の画一的解決の要請の諸相」と題するこの研究では、複数人間で共通の実体法状態を通用させる必要があるとされる実体法関係の特色を、分野横断的に解明することを目的としていた。そのために、①民事法分野における紛争の画一的解決の要請、②行政法分野における紛争の画一的解決の要請、③紛争の画一的解決の観点から見た行政行為の機能という3つの具体的な目標を設定し、研究を進めた。 ①に関しては、「対世効と紛争の画一的解決の必要性」と題する論文において、民事法関係における我が国の実定法の沿革を探求し、団体法(とりわけ会社法)、親族法、倒産法の各分野について、対世効規定が達成しようとした紛争の画一的解決の内実を明らかにした。②に関しては、「形成概念と第三者規律(一)~(六・完)」と題する論文において、我が国の第三者効規定の沿革とその内容解明を行い、民事訴訟法分野における「形成力」の概念の含意を明らかにすることを通じて、行政法分野における紛争の画一的解決の必要性に関する一定の知見を得た。また、「行政法関係における紛争の画一的解決の仕組み」という論文において、行政法関係における紛争の画一的解決を達成するための諸種の仕組み(対世効、必要的参加など)を考察した。③に関しては、「規律(Regelung)と取消原理」と題する論文において、二重効果的行政行為の事例、一般処分・対物処分、物権設定処分(とりわけ特許権設定行為)について、第三者効による処理が必要である理由を特定する前段階として、そもそも行政行為による「規律」、また行政行為が「違法でも取り消されるまでは有効」とされることの含意を、ドイツの学説史に遡って詳らかにした。
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