研究課題/領域番号 |
15K21384
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
岡村 陽介 東海大学, 工学部, 准教授 (40365408)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高分子ディスク / 形状変換 / 接着性 |
研究実績の概要 |
高分子微粒子は高分子溶液を用いた乳化法等で調製される。得られる微粒子は、通常熱力学的に安定な真球形態のため、粒子同士あるいは界面との反応は点接触反応(1次元相互作用)となる。面をもつディスク状構造体であれば、目的界面と面接触反応(2次元相互作用)できるため、反応性の向上等、特異な機能発現が期待できる。本研究では、既存の汎用性高分子であるポリスチレン微粒子を熱プレスにて変形させディスクとする簡易調製法を提案し、2次元相互作用によるユニークな特性(界面に対する接着性等)を明らかにする。 アルギン酸ナトリウム水溶液にポリスチレン粒子を添加し均一に分散させた後、カルシウムイオン存在下にてゲル化させた。次に、得られたゲルを小型熱プレス機にて熱プレス(110oC, 10 MPa, 30 s)した後、EDTAにてゲルを溶解し、遠心分離精製した。分散体を走査電顕観察したところ、熱プレス前の真球状粒子(プレス前の粒径: 1.02μm)と比較して、粒径が増大したディスク状粒子が観察された(ディスク径: ca. 1.67μm)。断面観察もそれを支持した。このプレス温度は、仕込む粒子のガラス転移温度(Tg)に相当し、それ以下では変形しないことから、ディスク化の必要条件であることを実証した。さらに、ディスク径は、仕込む粒子の粒径で制御可能であることも確認した。ポリ-L-リジンを吸着させたカチオン表面にカルボキシル基導入真球粒子あるいはディスク状粒子を吸着させたところ、両吸着数は同程度であった。そこで、両基板に空気を流入させたところ、前者の大半は脱着したのに対し、後者は維持されていた。これは、ディスクと界面の2次元相互作用に伴い接着性が増大したためと考察できる。従って、粒子をディスクに変形するだけで発現するユニークな特性(接着性の向上)を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、微粒子を熱プレスにて変形させディスクとする簡易調製法を確立し、2次元相互作用によるユニークな特性を明らかにした。したがって、本年度の研究目標は計画通りに達成され、順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、新しい薬物運搬体としてのディスク状粒子の創成を目指す計画にある。薬剤内包の調製条件を決定し、薬剤放出挙動や目的患部への接着性等を定量的に評価する予定である。この時、既存の真球状粒子と比較しながら、ディスク状粒子に特有の現象を見出していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
H27年度予算計画では、論文執筆にかかる英文校閲費(謝金)を計上していたが、投稿までに至らなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
H28年度は、H27年度に得られた研究成果として論文執筆中であり、差額を英文校閲費並びに投稿料に当てる計画である。
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