研究課題/領域番号 |
15K21387
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
尾崎 弘展 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (30747697)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | イメージング / 視床 / 大脳皮質 / 神経損傷 / 触覚 |
研究実績の概要 |
末梢神経損傷により中枢神経回路の改編が起きる。この回路改編の過程を観察するため、前年度に内因性シグナルを用いたin vivoイメージングシステムを立ち上げ、マウスのヒゲ感覚神経損傷により大脳皮質のdysgranular領域が活性化することを観察した。そこで本年度は、この領域が痛覚受容に関連した領域であることを証明するため、疼痛誘発物質であるカプサイシンをヒゲパッドに注射し、大脳皮質の当該領域が活性化するのかを神経活動の活性化マーカーであるc-Fosの発現により調べた。その結果、dysgranular領域の第4層でc-Fosの発現が上昇していることが分かった。このことはヒゲ感覚神経損傷によって活性化するdysgranular領域が痛覚受容に関与していることを示している。
また、感覚入力の失われた経路の中枢側がどのように変化するのかを経時的に観察するため、三叉神経主知覚核(PrV)とその求心性線維である内側毛帯線維にChR2を発現したマウス(Krox20 Ai32)を作成し、in vivoにおいて内側毛帯線維を選択的に光刺激することで、末梢神経損傷時に大脳皮質においてヒゲ感覚領域がどのように変化・退縮するのかを観察した。従来は、ヒゲ感覚神経を損傷すると大脳皮質ヒゲ感覚領域(バレル皮質)の活動は低下し、領域が縮小すると考えられていた。しかし、実験結果では、ヒゲ感覚領域の退縮は観察されず、活動が維持されていることが分かった。これは腕を失った場合に、腕の感覚が残存し続ける「幻肢」のメカニズムに迫る知見であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、optogeneticsを用いた内側毛帯経路を賦活化しバレル皮質の活動を観察することに成功した。結果は従来から予想されてきたものとは異なり、「末梢神経損傷後も中枢神経経路が縮小せず維持されている」というものであったが、これはヒトで腕を失った際に現れる「幻肢」のメカニズムを考える上で重要な知見であり、研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
イメージングにより観察された現象を神経細胞レベルでより詳細に検討するため、多チャンネル細胞外電位記録を用いて、末梢神経損傷によって大脳視床-皮質回路でどの回路が活性化しているのかを調べていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の物品が16,711円より高く、次年度に購入するのが妥当と判断したため。
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次年度使用額の使用計画 |
購入予定物品は2017年度4月中に納入予定であり、助成金の使用計画に変更はない。
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