研究課題/領域番号 |
15K21392
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
粟野 隆 東京農業大学, 地域環境科学部, 准教授 (20393374)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 近代 / 近代和風庭園 / 庭師 / 近代数寄者 / 東京 |
研究実績の概要 |
2015年度については、東京を中心とした近代和風庭園について、(イ)先行研究を総合的に確認し、(ロ)戦前に刊行された雑誌、図書資料を分析し、(ハ)近代東京の庭師のご家族に聞き取り調査をおこない、(ニ)数例の個別事例の現地調査や聞き取り調査を実施した。 (イ)については、過去20年における近代庭園関連の著作や造園関連学会に発表された論文等84本の成果を網羅的に収集し、研究動向を把握した。そのうえで、筆者がすすめてゆくべき課題を明確化した。その作業を通じて、近代和風庭園の様式、意匠、作庭者等を取り上げ、伝統性と革新性の観点から考察をおこなった。 (ロ)については、戦前に刊行された雑誌や図書として、日本庭園協会発行「庭園」(「庭園と風景」および「庭園と風光」を含む)、建築工芸協会発行「建築工芸叢誌」「建築工芸画鑑」 、重森三玲の『日本庭園史図鑑(明治・大正・昭和)』、近藤正一の『名園五十種』を取り上げ、近代東京を中心とした近代和風庭園の古写真を整理し、デジタル画像データとして網羅的に整理した。整理した古写真の枚数は643枚を数える。また、庭園の記述内容についても収集した。 (ハ)については、近代東京の庭師、2代目松本幾次郎、松本亀吉、岩本勝五郎のご子孫に聞き取り調査をおこない、各庭師の出自、来歴、主要作品、施主との交流関係について把握した。 (ニ)については、個別庭園の検討として、旧前田侯爵邸庭園(東京都目黒区)、旧古河邸庭園(東京都北区)、旧岩崎小彌太邸庭園(東京都港区)について調査を実施し、雑誌等にその成果を公表するとともに、講演会等で社会に向けて成果の普及啓発をはかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の全体構想は、東京を中心とした近代和風庭園について、その立地、地割、意匠の特色、庭の所有者の好みや思想、築造を担当した庭師の作品性と作庭活動を明らかにすることである。この課題を達成するため、初年度は近代に刊行された庭園関連図書・雑誌等に関して基本文献を整理し、東京の近代和風庭園がいかなる景観的様相を有しているかの概要を把握することができた。聞き取りをおこなうべき庭師について、試論的に聞き取り調査を実施できており、平成28~29年度に実施すべき方法の明確化ができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、さらに戦前に刊行された庭園関連図書・雑誌について画像資料の整理を図りつつ、庭師に関する聞き取り調査を継続する。あわせて、近代数寄者の伝記、茶会記、庭園見学記録、図面、古写真等の文献資料を収集し、庭園の地割、水景、植栽、石造美術品に関する志向や庭園利用に関する特色を整理する。現地調査としては、近代数寄者の庭園が塩原の自然風景を模したものであるという既往の知見を検証するため、塩原への現地調査を計画している。現存する近代数寄者の庭園については、数例程度測量を実施し、詳細な意匠把握をおこなう。具体的な事例としては、旧藤山雷太邸庭園(東京都港区)、旧渋沢栄一邸庭園(東京都北区)等が部分的に遺存していることを把握しており、残存部分を重点的に測量する。近代数寄者が別荘地(小田原、大磯、箱根等)に造営した庭園も調査し、一部は写真測量を実施したい。
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