本研究の成果として、以下のことを明らかにすることが出来た。 (1)近代東京の邸宅の立地に関する整理:明治42年に作成された「東京一万分一地形図」を用いて、邸宅の立地分析をおこなった。研究の結果、東京府東京市旧15区(麹町区、神田区、日本橋区、京橋区、芝区、麻布区、赤坂区、四谷区、牛込区、小石川区、本郷区、下谷区、浅草区、本所区、深川区)、5郡(荏原郡、豊多摩郡、北豊島郡、南足立郡、南葛飾郡)および北多摩郡においては、242邸宅を確認することができた。さらに等高線の分析から、等高線を確認し、庭園の立地を、①台端(敷地が崖線沿いの台地端部に立地するもの)、②斜面(庭園が斜面地に立地しているもの)、③平地(庭園が平坦な地形上に立地するもの)、と区分した。なお、平地の庭園については、台地上(台地上部に位置するもの)、崖線下(崖線下に位置するもの)、低地(周辺に崖線のない低地に位置するもの)、河岸(河川や掘割沿いに位置するもの)、海浜(海に面して立地するもの)に細分した。 (2)近代数寄者の庭園に関する整理:本研究では、近代数寄者の庭園について、関連文献等の文献調査を中心に、三井高棟、久原房之助、大谷米太郎、遠山元一らの現存する庭園遺構の現地調査をおこない、地割(庭園の全体の配置構成)、意匠・技法、庭園に対する好み・志向、利用の特色を整理できた。 (3)近代東京の庭師・造園家に関する整理:東京の近代数寄者の庭園を数多く手がけた庭師の作風や作庭活動を明らかにすることをねらいとして、4代岩本勝五郎、2代目松本幾次郎やその弟・亀吉、柴田徳次郎らの庭師、東京高等造園学校出身の造園家などの作庭活動や作風の一端を知ることができた。
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