研究課題
本研究は申請者らが見出した、「GSK3βが、細胞内のエネルギー代謝を制御するAMPKと結合し、その活性を阻害する」これが、AMPKとGSK3βの両者に共通する複数ある基質のうち、特にグリコーゲン合成酵素GSの活性の制御にとって重要であるか解析を行うものである。具体的に、①AMPKとGSK3βの結合を妨害することによってGSの活性に変化が起きるのか。②GSK3βによるAMPKの阻害がGSの活性調節に寄与しているのか③グリコーゲンに結合できるAMPKはGSK3βの足場となりえるのか。これらを解明し、「AMPK-GSK3β複合体」がGSを介してグリコーゲン代謝へ与える分子メカニズムを明らかにする。平成27年度では、まずはじめに、培養細胞中のAMPKβをノックダウンすることにより、AMPK-GSK3β複合体を阻害することにより、GSK3βがGSをリン酸化するレベルに違いが生じるか検討した結果、GSのリン酸化の減少が認められた。よって、AMPK-GSK3β複合体がGSを制御するうえで重要な役割を果たしていることが示唆された。また、AMPK-GSK3β複合体を形成しないAMPKβ変異体を発現する細胞の構築をするために、AMPKβにおけるGSK3βの結合部位の特定を行った。その結果、AMPKβのC末端にGSK3βとの結合領域が存在することが明らかとなった。現在、変異体の安定発現株の作製をするために、グリコーゲン代謝の解析に有用なヒト肝癌由来のHepG2細胞を用い、レトロウイルスにて作成を行っている。また、本研究を進めるなかで、AMPKとGSK3の新たな共通する基質として、新たに微小管の形成を制御するMAP1Bを同定し、そのリン酸化部位を明らかとした。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、平成27年度にAMPK-GSK3β複合体がGSのリン酸化へ影響を与えるかどうかを、AMPKノックダウンにより示すことができ、また、AMPKβにおけるGSK3βの結合部位の特定もできたことから、おおむね順調に進展していると思われる。
今後は、AMPK-GSK3β複合体を形成しない変異体を発現する細胞の構築をさらに進め、この細胞を用いてGSの活性に変化を及ぼすか測定するとともに、実際にグリコーゲン合成にまで変化を及ぼすか調べる。また、研究計画の都合上、平成27年度に行う予定であった、GSK3βの細胞内局在性におけるAMPKの役割の解析を平成28年度に行う。
当初の計画よりも順調に実験が進んだことや、研究計画の都合上、平成27年度に行う予定であった、GSK3βの細胞内局在性におけるAMPKの役割の解析を平成28年度に行うため、自年度使用額が生じた。
平成27年度に行う予定であった解析を行うために使用することの他に、本研究を行うなかで新たに見出した、AMPKとGSK3に共通する基質であるMAP1Bを解析するために使用することで、AMPK-GSK3複合体の基質に対する制御メカニズムの詳細な解明につなげていく計画である。
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