研究課題/領域番号 |
15K21397
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
小澤 佑介 東京理科大学, 理工学部, 助教 (20634215)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 可視光通信 / 照明 / 協調通信 / 変復調方式 / 知的照明 / カラーシフトキーイング / LED / CSK |
研究実績の概要 |
本研究課題では、高密度に配置した複数色LED光源(複数色LEDアレイ)を協調利用した照明/ディスプレイ機能と通信/センシング機能の融合による高度知的照明システム実現のための基礎理論構築を目的としている。今年度は特に、(1)デジタル制御型カラーシフトキーイング方式の設計、(2)複数色LEDアレイを用いた空間変調技術の設計、(3)複数色LEDアレイを用いた変調光信号の照明品質についての実験的評価、の3点について検討を行った。(1)の成果として、デジタル制御型カラーシフトキーイング(DCSK)方式を提案した。本提案方式では、オンオフ制御したLED光源を複数協調利用することで、LED非線形発光の影響を回避しつつ、高精度な多値光信号を生成すること可能である。さらに、DCSK方式における信号点配置法として、光源として用いる色数の次元に拡張した信号電力空間における信号点配置法を検討し、信号点間距離が最大となる信号点配置から信号点を移動することで、人間の目に知覚される色(ターゲットカラー)を制御することが可能であることを示し、所望の照明効果(色度座標、相関色温度)を達成する信号点配置手法についても提案を行った。(2)の成果としては、屋内通信を想定した複数色LEDによる空間変調技術の検討を行い、複数色を用いることで青色LEDに蛍光体を組み合わせた白色LEDを用いた空間変調方式に比べて伝送速度を大幅に改善可能であることを示し、現在DCSK方式と融合した変復調技術について検討を行っている。最後に(3)の成果として、複数色LEDアレイを用いた可視光通信の実験評価系の製作、及びDCSK変調信号のFPGA実装を完了し、現在評価を行っている。今後はこの評価系にターゲットカラー制御を考慮した信号点配置を実装し、その照明特性を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画においてあげた3つの課題、(A)デジタル制御型カラーシフトキーイング(DCSK)方式による空間変調技術の基礎検討、(B)複数色LEDアレイを用いた変調光信号の照明工学的観点からの性能解析、(C)DCSK方式による空間変調技術の通信/照明性能の解析、のうち(B)についてはほぼ解決の目処がたった。また(A)においても、複数色LEDアレイを用いたDCSK方式、および複数色LEDを用いた空間変調技術の設計は完了しており、最終年度において2つの方式を融合した方式の検討を行う予定である。(B)についても、当初予定していた3色LEDに加えて、より多色の光源を用いたDCSK方式の実験評価系が実装済みである。この実験評価系により、色温度性能の検証に加えて、照明品質を評価する際に重要な要素の一つである演色評価指数の測定、およびその改善法についても検討可能となった。また、(C)のDCSK方式による空間変調技術の通信/照明性能の解析については当初計画においても最終年度の課題となっており、これも計画通り進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り全体として研究はおおむね順調に進展している。最終年度では、複数色LEDアレイを用いたデジタル制御型カラーシフトキーイング(DCSK)方式による空間変調技術について中心的に検討を進める。とくに、LEDアレイ上の個々のLEDと色/空間情報とのマッピング手法について検討を行い、その際の通信/照明性能についてシミュレーション、実験の両面から解析を行う予定である。さらに(B)においては、実環境での照明効果について製作済の実験評価系を用いることで定量的評価を行い、さらに変調速度依存性についても解明を行う。最後に、LED及びLEDアレイの光源的特性等についても検討を行い、システム全体を通した最適化についても検討を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の設備備品費(物品費)として計上していたFPGAを新規購入しなかったため次年度使用額が生じている。購入しなかった理由は、すでに開発していた可視光通信実験評価系(プロトタイプ)において、FPGAプログラミングの高効率化に成功したことで、既存FPGAでの実装が可能となったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の通り可視光通信実験評価系については開発の目処がたっている。一方で本研究のシミュレーション解析については様々な送受信機/室内環境を考慮したプログラムを実装しており、その処理時間が膨大であるという問題がある。この処理時間を短縮し新たな研究成果を得ることにより、シミュレーションによる新たな知見を可視光通信実験へとフィードバックすることが可能となる。これは、本研究課題における新たな課題/成果を発見するために重要であり、本研究を新しい段階へと成長させる可能性を模索するためにも必要不可欠である。したがって、シミュレーションプログラム処理時間短縮のために、新たなワークステーション等の購入を検討している。
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