研究課題/領域番号 |
15K21400
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
恒岡 弥生 東京理科大学, 薬学部, 助教 (50734597)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 1型糖尿病 / 脳血管 |
研究実績の概要 |
糖尿病における中枢性の合併症として、不安やうつ等の精神障害や認知機能障害がある。ラットにおいて幼若期および成体期に1型糖尿病を発症させると認知機能障害が惹起されることが報告されている。申請者所属研究室において幼若期および思春期発症1型糖尿病ラットを比較したところ、行動試験および電気生理学的手法を用いた検討で幼若期で障害が顕著に見られ、さらに両者の電気生理学的パラメータに差異がみられたため、糖尿病の発症時期により異なる機序で認知機能が低下したと推測される。本研究では、幼若期および成体期発症1型糖尿病モデルにおける脳血管障害を発達時期別に評価することで糖尿病性中枢神経障害の発症メカニズムの解明を目指した。脳血管の透過性の評価は麻酔下ラットに蛍光色素を尾静脈内投与し、血漿含有量に対する脳実質への色素の取り込み率を比較した。また、血管内皮細胞やアストロサイトを免疫蛍光染色により可視化し、コントロール群と糖尿病群で比較観察を行なった。その結果、糖尿病群では、海馬など脳の特定の部位で蛍光色素取り込み率が有意に増加しており血管透過性が亢進していることが分かった。また、血液脳関門の構成成分に形態的な変化が見られるプレリミナリーな結果が得られている。これらの影響は発症時期により異なっている可能性もある。 また、末梢の血管および血管障害に関して次の検討を行った。まず、プログルカゴンから切り出されるペプチドGLP-2は糖尿病性認知障害含め精神疾患(うつ、不安等)に対し優れた薬理学的効果を示すが、腸間膜動脈など末梢血管に対しても神経の調節を介し収縮弛緩機能に寄与していることを明らかにした。次に、心肥大や伸展等病態の影響を受けやすい肺静脈に対する評価を行い障害の発生メカニズムの一部を明らかにした。糖尿病により影響を受けている可能性も考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
27年度は幼若期発症1型糖尿病モデルラットを作製し、①高血糖による血管の走行や血液脳関門の機能を調べるための実験系の構築、②発達時期・脳部位の障害の違いを調査、③神経細胞を単離し高血糖による影響を調査、を行う予定であった。①の実験系の構築は免疫組織学的評価の一部を除き成功した。②および③は①の方法で評価を行いプレリミナリーな結果が得られているが精度に関しては改良の余地がある。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は糖尿病による血管障害の詳細なメカニズムの解明と血管障害が神経機能に与える影響を明らかにすることを目的とする。血管および血液脳関門と神経細胞・グリア細胞の連関を明らかにするために画像解析および分子生物学的評価を行う。また行動試験や電気生理学的手法を用いて血管障害と神経障害の機能的連関に対する評価を行い血管障害が中枢神経障害に及ぼす影響を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験系構築および評価の過程で用いた試薬を、実験上の都合で安価なものに切り替えたため。また、学会費および旅費は科研費を使用していないため。
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次年度使用額の使用計画 |
実質的な研究のための消耗品費に用いる。消耗品費の中心は病態モデルを含めた実験動物代・動物飼育代と、試薬代、一部細胞培養・遺伝子工学用品である。
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