研究課題/領域番号 |
15K21404
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
坂本 徳仁 東京理科大学, 理工学部教養, 准教授 (00513095)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 障害者雇用政策 / 障害者教育政策 / ミクロ計量経済分析 / 潜在能力アプローチ |
研究実績の概要 |
平成29年度は、①障害者雇用状況の情報開示請求により得られたデータ(各都道府県の企業名、住所、電話番号、障害者雇用率、障害者雇用数、算定基礎となる雇用者数、障害者雇用の相談員の配置状況など)の整理作業を行う、②障害者雇用に関する実証・理論的研究の取りまとめ作業を行い、その成果を書籍にて公刊する(日本の障害者雇用制度の概要、法定雇用率未達成企業の名称公開が企業株価に負の影響を与えたとする先行研究の批判的検討、障害者雇用が企業の生産性や利潤率に与える影響を分析した先行研究などをまとめた展望研究)、③障害者雇用割当・納付金制度の政策評価の論文を学術誌JJIEにて公刊する(2008年時点では障害者雇用の増大が必ずしも企業の利潤率に負の影響を及ぼさないことを不連続回帰デザインによって検証した研究)、④厚生経済学における理論的に性能のよい福祉指標を構築する研究を国際学会で報告する(消費ベクトルや各種の資産状況が単純に大小比較可能な場合には、より多く消費している個人の方が生活状況が良いと判定する基準を考え、その基準を満たすような福祉尺度のクラスを理論的に明確化した研究)、⑤潜在能力アプローチの理論的性能の検証の論文を学術誌に投稿した上で、その後継研究も行う(純粋交換経済において潜在能力集合の共通部分を極大化する分配ルールと各人の潜在能力集合の評価を等しくするような分配ルールの公理的特徴づけの研究)、⑥障害者教育の政策評価に必要となるデータの性質について研究報告を行う(障害者教育の効果を疑似相関の問題を排除して科学的に意味のある形で分析するために必要となる検証方法やデータについてまとめた研究)、といった作業を実施した。 その結果、各作業について一定の前進があり、障害者教育・雇用制度の有効性を検証する最終年度の分析に着手する状況が整いつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各研究計画は概ね当初の計画通りに進んでいる。とりわけ障害者の福祉指標に関する研究では当初の想定以上の成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、①障害者雇用状況の情報開示請求により得られたデータと他の公的データを結合して最終的なデータ分析を行うために関連する省庁に情報開示請求を行う、②障害者雇用率未達成企業公開の政策的意味合いについて追加検証を行う、③障害者教育の政策評価について必要となるデータや質問項目について先行研究および自分の研究を概観し、国際比較調査に障害者のデータを含めて活用する際に必要となる知見をまとめる、④理論的に性能の良い福祉指標(財貨の大小関係を反映しつつ、各人の選好評価を最大限に反映した福祉指標)に関する可能性定理・不可能性定理を論文にまとめた上で投稿する、⑤潜在能力アプローチに基づく分配のあり方の公理的な特徴づけの後継研究を論文にまとめる、といった作業を行なう。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)平成29年度中に複数の国際学会にて報告することが許可されたため、学会の渡航費・参加費に使用することにした。また、海外の研究者からの共同研究の誘いがあったため、共同研究のための出張費に必要な資金を次年度に持ち越すこととした。
(使用計画)当初の想定以上に研究が進んでいる福祉指標の分析および潜在能力アプローチの研究について、これらの研究成果を国際的に発表するために平成30年度に参加・報告する予定の国際学会での旅費・参加費に研究費を使用する。また、海外の共同研究者の招聘ないし自分が共同研究者の大学に行く際の旅費に使用する予定である。この他、得られた研究成果を英文査読誌に投稿するために、論文の英文校閲の費用にも利用する。
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