研究課題/領域番号 |
15K21408
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
高橋 典史 東洋大学, 社会学部, 准教授 (50633517)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 難民 / 定住化 / 多文化共生 / 宗教と社会貢献 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本のベトナム系のインドシナ難民の集住地域において、日本社会の既存の宗教関連組織(とくにカトリック教会)が、当該地域に居住する難民たちの定住化にいかなる役割を果たしてきたのかについて現地調査を行うことにより、宗教を通じたベトナム難民と地域社会との「多文化共生」の実態を明らかにすることである。とくに以下の2点を中心的な研究課題としている。 (1)1970年代半ばから90年代にかけて日本が行ったインドシナ難民受入事業に参加した宗教関連組織の取り組みの実態と、その後の難民の日本での定住化への支援事業の解明。 (2)各地のベトナム難民集住地域の受入の実態とその後の地域社会における難民の定住化に宗教関連組織が果たした役割の解明。 平成27年度中は、静岡県浜松市、兵庫県神戸市、埼玉県川口市といったベトナム難民の集住地域の現地調査を実施し、ベトナム難民の地域社会における定住化の過程で起こった諸問題と宗教との関係性についての幅広いデータを収集した。さらに、カトリック教会や曹洞宗のシャンティ国際ボランティア会などの、インドシナ難民支援に関与した諸団体への訪問調査も進めた。そのほか、書籍、報告書、新聞報道など、本研究に関連する文献資料の収集にも努めた。 こうした調査の成果の一部は、平成27年夏に開催された国際学会International Association for the History of Religions (IAHR) World Congress Erfurt 2015(ドイツ)において発表したほか、『アジア遊学196 仏教をめぐる日本と東南アジア地域』(勉誠出版、2016年)の収録論文として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各地域における現地調査、宗教関連組織への訪問調査、各種の文献資料の収集などは問題なく遂行できただけでなく、国際学会での成果発表や論文の公表も行うことができたため、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究はおおむね順調に進められてきたといえるが、今後のさらなる進展に向けてはいくつかの課題がある。まず、現地調査を行うことができた地域が限られているため、さらに兵庫県姫路市、大阪府八尾市、神奈川県の各所などについても調査を実施する必要がある。また、近年、留学生や技能実習生等として来日するベトナム人が急増しており、彼ら/彼女らと「オールドカマー」である難民との間にはさまざま問題も生じている。そのため、今後は「オールドカマー」と「ニューカマー」のあいだの交流という観点からも調査を進めていく計画である。最後に、現時点では日本国内の事例に関するデータ収集が中心となっていることから、次年度以降はアメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、フランスなど、海外のベトナム難民ないしはインドシナ難民の定住化のプロセスにおいて、宗教関連組織が果たした役割についての情報収集にも努めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は人件費・謝金が発生せず、また物品費、旅費が当初の想定よりも低額に収まったことから、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は現地調査や学会発表の遂行のために必要となる旅費として使用する計画である。
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