本研究では、日本におけるインドシナ難民、とりわけベトナム難民の地域定住において、宗教が果たしてきた役割を解明することを主たる目的として調査を遂行した。本年度に関しては、静岡県浜松市および埼玉県川口市を中心に、ベトナム難民の集住地かつ技能実習生や留学生などとして近年来日したベトナム系住民が数多く住む地域において、参与観察やインタビュー調査等を実施した。こうした地域調査から得られたデータを考察した結果、ベトナム難民の集住地域においては、カトリック教会を代表とする宗教施設とそこに集う関係者たちが、ベトナム難民の組織化(エスニック・コミュニティの形成)と地域定住に大きな役割を果たしてきただけでなく、近年急増しているニューカマーのベトナム系住民の組織化と彼ら/彼女らの日本での生活の支援においても、大きな役割を果たしている実態が明らかとなった。とくに難民として来日し、長年にわたって日本で暮らしてきた人々の一部が、宗教施設とそのネットワークを基盤にしてニューカマーたちを支援してきた事例は、「日本人住民」による「外国人住民」への支援という二者関係で語られることの多かった、日本の多文化共生の取り組みに関わる議論に対して、新たな視点を提供しうるものである。なお、本研究の成果の一部は、2017年7月に国際学会であるInternational Society for the Sociology of Religion 34th Conference 2017で発表(白波瀬達也氏との共同報告)した。
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