薄板の異種金属を接合する有効な方法の一つとして超音波接合法が挙げられる。超音波接合法は,接合対象に均等な静圧力と振動源により超音波振動を加えることによって接合する方法である。超音波接合法は,熱を用いない方法であるため融点の異なる異種金属の接合が容易に行える方法である。しかし,従来の超音波接合法は,一方向の直線の振動のみを用いていたため,振動エネルギーが小さい。また,直線の振動は,方向性があるため,接合対象の設置方向により接合強度にばらつきが生じる。そこで,申請者は,振動エネルギーが増大し,接合強度の向上が考えられる縦振動とねじり振動を組み合わせた面状軌跡を提案し,その振動を用いた超音波接合法の開発を目的としている。平成29年度の研究実績は下記の通りである。 まず接合中の静圧力を安定させるために,加圧機構にスプリングを用いた接合装置の開発を行った。そして,その接合装置にて,直径4.2 mmの刻み目のついた接合チップを用いて,銅板とアルミニウム板の接合を行い,種々の条件による接合特性の検討を行なった。その結果,平成28年度に用いた球面形状の接合チップと同様に,接合強度は,面状振動軌跡を用いることで向上することを明らかにした。面状振動軌跡による接合強度は,静圧力500 Nで,接合時間0.6秒間において,約650 Nとなった。なお,同条件において,一方向の直線の振動を用いた場合の接合強度は,約550 Nとなった。 また,接合対象の設置方向を変化させた場合の接合強度の検討を行った。その結果,一方向の直線の振動を用いた場合,接合強度は,設置角度の変化に伴い変化した。また,接合が不可となる角度も確認された。一方,面状振動軌跡を用いた場合の接合は,全ての設置角度にて接合が可能で,接合強度は,角度によらずほぼ一定の値となった。
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