研究課題
前年度の有効な研究結果を基に研究計画を発展させ、舌神経損傷モデル(LNC)ラットを用いて、三叉神経節(TG)における神経‐サテライトグリア細胞(SGC)機能連関への影響因子を解析した。疼痛を誘発する細胞外プリンヌクレオチド、とくにADPをリガンドとするGタンパク質共役型受容体(P2YR)のサブタイプは、TGに存在する。NaiveラットのTGにADPを直接投与すると舌への機械及び熱刺激に対する逃避閾値が低下し、TGでのカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)産生細胞数増加とSGCでの細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)のリン酸化が確認された。一方、LNCラットのTGにP2Y12Rの選択的アンタゴニスト(MRS2395)を投与、またはnaiveラットのTGにADPとMRS2395を同時投与すると、舌への刺激に対する逃避閾値の低下が抑制され、CGRP産生細胞数増加とERKのリン酸化も抑制された。前年度の結果と合わせると、神経障害性疼痛発症時の一次ニューロンにおけるCGRP産生細胞数増加やエピジェネティック変化はSGCでのERKリン酸化と相互作用があり、そのSGCの活性化にはP2Y12Rの関与が重要であることが示唆された。続いて、二次ニューロン(三叉神経脊髄路核尾側亜核:Vc)でのエピジェネティック制御についても行動薬理学的に検討した。神経損傷モデルラットの大槽内にDNAメチル化転移酵素阻害剤を投与すると逃避閾値低下が有意に抑制された。従って、神経障害性疼痛には末梢神経系のTG、中枢神経系のVcの両者でのエピジェネティック制御が機能していることが推察された。さらに、神経障害性疼痛発症時にVcの投射ニューロンで生じる機能変化について解析中である。上記データは国際・国内学会にて発表した。また、一部のデータは国際誌に発表した(Saito et al. Exp Neurol 2017)。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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