本研究の目的は、口腔機能の向上に効果的な新しい機能訓練プログラムを確立することである。 初年度は、健常者を対象として口腔機能の評価法を検証した。口腔周囲筋圧、咬合力、咀嚼能率を測定し、測定値の信頼性と妥当性を検証して信頼係数0.9以上となる測定回数を求めた。検証の結果、信頼係数0.9以上となる測定回数は舌圧・頬圧・上唇圧で1回、下唇圧・咀嚼能率で2回であった。 次年度は、ガム咀嚼トレーニングの継続が口腔機能に与える影響を検証した。ガム咀嚼トレーニングは、ガムを左右側臼歯部で10回ずつ交互に繰り返し咀嚼する運動で、1回につき5分間継続するものとし、対象者には1日3回、3か月間継続するよう指示した。その結果、口腔機能はトレーニング開始2週間後から3か月後まで上昇傾向を示し、トレーニング中止後もその効果が維持されることが明らかとなった。 続いて、新しい口腔機能訓練プログラムを模索するため、ガムの硬さによる効果の違いと、舌回旋トレーニングの効果を比較した。舌回旋トレーニングは、舌尖を唇頬側歯肉と頬粘膜との移行部に押しつけながら回旋させる運動で、対象者には、右回り、左回りを交互に20回、1日3回、3か月間実施するよう指示した。ガム咀嚼トレーニングは、咀嚼訓練用の硬性ガムと通常の硬さのガム(軟性ガム)を用い、前年度と同様のスケジュールで両群にトレーニングを指示した。その結果、軟性ガム群、舌回旋トレーニング群、硬性ガム群の順に口腔周囲筋圧の増加率は高くなり、トレーニング中止後の減衰はトレーニング効果の高い群の方が緩やかであった。このことから、トレーニングの効果はプログラムにより異なり、咀嚼試料の硬さにも依存することが明らかとなった。現在、各機能訓練プログラムによる顎頸部の筋負荷の相違を検証しており、トレーニング効果発現時期と中止後の経過について調査を続けている。
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