研究課題/領域番号 |
15K21416
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
桑原 考史 日本獣医生命科学大学, 公私立大学の部局等, 講師 (10724403)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 農業環境政策 / 環境直接支払 / 環境保全型農業 / 共同活動 / 地域組織 |
研究実績の概要 |
農業環境直接支払(以下、環境支払)の地域的展開について、新潟県佐渡市、兵庫県豊岡市、滋賀県及び同県長浜市を対象に、行政担当者からの聞き取り調査を行い、制度の形成過程及び運用の実態把握を行った。また、上記3市における環境保全型稲作の複数の生産者、佐渡市・長浜市においては地元JAの聞き取り調査を実施した。当年度における研究成果(明らかにしたこと)は下記の通りである。 まず、各調査対象地域では、農業生産における環境配慮のあり方に複数の段階(取組内容、生産物の出荷区分)があり、環境支払はもっとも水準の高い取り組みに対して実施されていた。このことから、レファレンスレベル(環境保全に関する生産者と社会の責任分界点)は、環境と農業のかかわりのあり様(汚染源か保全主体か等)だけでなく、栽培技術の難度やマーケティング戦略により規定されている。当初想定していた農業環境政策の枠組みを、栽培技術の特性やマーケティングといった視角から再整理する必要がある。 次に、環境支払の単価設定の根拠は、掛かり増し経費の補てん(滋賀県)、米販売価格が目標水準に達するまでの一時的な補てん(豊岡市)、基礎的な所得補償(佐渡市)などさまざまであった。一方共通点として、これらの自治体では、個々の経営に対する支払にとどまらず、集落・JA部会・生産者グループといった地域ないし組織単位の取り組みを促進していた。背景には、2015年度に国の環境支払の申請単位・要件が改定されたことがある。環境支払に先駆けてわが国で実施されている中山間地域等直接支払が、集落協定を要件として一定の成果を挙げていることを想起すれば、注目される動きである。環境支払における地域・組織の共同の意義を、追究していく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新潟県佐渡市、兵庫県豊岡市、滋賀県の現地調査はほぼ予定通りに実施できている。一方、宮城県大崎市については、調査日として当初想定していた土休日や長期休暇に学内業務が立て込み、初年度は現地調査を見送らざるを得なかった。ただし、現地までの交通アクセスは他の事例地域に比べ容易であること、行政、農家、NPO等の人脈をすでに有することから、調査日程を入念に調整の上、初年度に予定していた分を含め計画を消化するのは十分可能である。
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今後の研究の推進方策 |
宮城県大崎市の現地調査を取り急ぎ実施するとともに、当初の研究計画及び「研究実績の概要」で記した方針に従って、地域や組織に対する現地調査を実施する。また、学会報告や論文投稿による成果の公表を積極的に進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査実施にあたり、調査補助(学生を想定)を諸事情により確保できなかったため、補助作業用の物品購入(ノートパソコン)や人件費・謝金の消化が当初計画通りに進まなかった。また、調査の進捗がやや遅れたため、旅費の消化が当初計画通りに進まなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
大学の夏季休暇・春季休暇をおもに利用して調査補助人員を確保し、効率的に現地調査を進める。その際、当該年度に使い残した物品費及び人件費・謝金も充当する。また、調査の進捗の遅れを取り戻し、旅費を計画的に消化する。
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