足底圧分布データはこれまで,主に足部中足骨の障害や疾病(糖尿病,リウマチ)などによる足底部位の変形や損傷の診断に用いられてきた.しかし,一方で足底圧分布データは,地面からの力の伝達や圧力情報を色のコンターに表して定性的に捉えることが可能となるため,動作の改善のために運動実施者の力感「力発揮の感じ」を捉えたフィードバック方法として,スポーツの指導現場や臨床現場において有効的な手段となっている.またそのデータの足圧中心(COP)位置情報は,身体合成重心と関係し,動きを推測する手段ともなりえる.しかし,この足底圧分布データの活用は,上述するように定性的な評価や診断に留まっていることが現状であり,足底圧分布データと動作の関係性は明らかではない. 本研究は,歩行・疾走中の足底圧分布データと全身の運動学データおよび足部の運動学データを同時に収集し,足底圧分布データの変化から運動学データの推定の検討を行った.その結果,足底圧分布データの量的な大きさは,歩行速度や疾走速度に関係し,さらに,踵部位と前足部位の荷重・圧力値は,歩行・疾走速度のストライドや踵の接地角度および足関節の角度に関係する傾向を示したが,一方で足底圧分布の内側、外側の荷重・圧力値と運動学データの関係には個人差がみられた.これは足部機能より個人のアーチや足部構造の個人差が影響していると推察された.このような情報をもとに幼児・児童の足底圧分布データから運動学の推定を試みた.幼児・児童の足底圧分布パターン変化は,足部や身長の発育発達および動作の習熟度によって個人差が大きい傾向を示した.特に幼児・児童は,身長が関係するストライドなどが足底圧分布データの違いに関係することが考えられた.
|