企業の投資行動と産業構造について,最適借入契約のモデルで分析し,自己資金の減少は,自己資金が比較的に多いときには投資総額を減少させるが,自己資金がかなり少ないときには投資総額を増加させること,いずれのときも,リスクのないプロジェクトへの投資額を減少させ,リスクのあるプロジェクトへの投資額を増加させることを示した。この結果は,個々の企業が戦略的に自己資金を減少させる誘因を持つこと,そして,そのような戦略的行動が総余剰の期待値を増大させる可能性があることを示唆する。また,財務状態の悪化した企業に対する再生支援が,当該企業にとっても,社会全体にとっても,望ましくないものになる可能性を示唆する。
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