研究課題/領域番号 |
15K21421
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
小林 亮太 東京都市大学, 工学部, 講師 (30548136)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | セラミックス |
研究実績の概要 |
今年度はAlNの低温・短時間焼結プロセスを確立させることを目的として、常圧焼結または加圧焼結の一種である放電プラズマ焼結(SPS)で緻密なAlNセラミックスを作製し、焼結収縮挙動や微構造、熱伝導率の評価を行った。 放電プラズマ焼結(SPS)では、低温焼結助剤としてこれまで用いてきたY2O3-CaO-B系に加え、より緻密化効果が高いと考えられるY2O3-CaO-LaB6系の助剤を利用し、1500℃以下の焼結での緻密化を目指した。いずれの助剤でも1500℃-10 minの焼結で相対密度98%以上とほぼ完全な緻密化が達成できていたが、焼結収縮挙動の解析によりY2O3-CaO-LaB6系の助剤の方がやや早い段階で緻密化することが明らかとなった。そこで、この助剤を利用してSPSの際の加圧力を2倍にしたところ、1450℃-20 minで完全な緻密化を達成した。得られた焼結体は粒径1 um程度の微細な組織を持ち、熱伝導率は1650℃で焼結したAlNセラミックスと同等の80 W m-1 K-1であった。SPSでの焼結実験の結果を踏まえ、常圧焼結においてはY2O3とCaOを量を変えずに助剤中のBの添加量のみを変化させ、緻密化への影響を調査した。Bの添加量が0~0.64 wt%の範囲においては、Bの添加量を増加させるほど緻密化が進み、それに伴って熱伝導率も向上する結果が得られた。 上記の研究と並行して、次年度以降に行うAlNセラミックスの柱状組織化の研究で使用する針状AlN種結晶について予備的な合成実験を実施した。Al2O3の炭素還元窒化プロセスでは微細なAlN粉末が得られたが、Al合金のメルトを直接窒化するプロセスを利用することで、所望のアスペクト比が10~100以上の針状AlN単結晶を合成できることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AlNの超低温・短時間焼結化における焼結助剤の検討により、助剤中のB成分の添加方法・添加量を変化させることで緻密化の改善を確認することができている。加圧力を増大させてSPSで焼結するというやや特殊なプロセスによるが、1450℃-20 minの焼結でもほぼ完全な緻密化と従来の低温焼結AlNと同等レベルの熱伝導性も達成できている。一方で、熱伝導率は100以下とAlNセラミックスとしては依然として低い値に留まっているが、次年度以降の組織制御の研究の進展による向上は十分に期待できる。 次年度以降のAlNセラミックスの柱状組織化の研究に必要になる針状AlN種結晶の合成については既に予備実験を行っており、Al合金メルトの組成や窒化温度の制御による結晶形態の制御も可能であることを確認している。
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今後の研究の推進方策 |
課題であるAlNセラミックスの柱状組織化に利用するAlN針状結晶の合成自体は、予定の炭素還元窒化法ではなく、より簡便なAl系メルトの直接窒化により行うことができている。今後はAlN針状結晶のモルフォロジーの制御を行いながら、当初の予定通り順次AlN-助剤混合粉末に種結晶または高熱伝導核として添加し、焼結実験と評価を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
作製した試料を加工するため、研究室内に小型の平面研削盤および研磨盤を導入する予定であった。しかし、狭いスペースに設置可能で価格的にも導入可能な機種がなかったため、これらの機械の導入を今年度は見送った結果、物品費が余ることとなった。今年度の研究では作製した試料のサイズが比較的小さく、数量もそれほどなかったため、校費による外注および共同研究先の機器を借用して対応した。
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次年度使用額の使用計画 |
今後研究が進むにつれて、必要な試料サイズが大きくなり数量もさらに増える可能性が高いため、平面研削盤や研磨盤の導入の必要性は高まると考えられる。学科内の共通スペースへの機械の設置や、よりロースペックな機種の選定などで対応することを考えている。
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