昨年度までの研究により、AlNウィスカーの合成とAlN焼結体の組織制御への利用に関する基礎が構築されたため、今年度はAlNウィスカーの添加量の検討と焼結体の熱伝導性以外の特性として機械的特性の評価も実施した。 Alメルトの直接窒化プロセスで合成したAlNウィスカーを最大で20vol%まで添加し、さらにY2O3-CaO-B系の低温焼結助剤を添加し、常圧焼結または放電プラズマ焼結により緻密化させ、ウィスカーの添加が緻密化に与える影響を調査した。常圧焼結の場合は、ウィスカーを20vol%まで添加すると相対密度が90%以下まで低下したが、放電プラズマ焼結では同じ添加量でも相対密度は98%以上とほぼ完全に緻密化した。研磨面のSEM観察を実施したところ、常圧焼結ではウィスカーの周囲に空隙が多くみられたが、放電プラズマ焼結を利用した場合はウィスカーとAlN粒子が隙間なく強固に接合していた。いずれの場合も添加されたウィスカーは焼結体中にそのまま存在していた。 得られた試料の熱伝導率はいずれの試料でも100 W m-1 K-1以下であったが、ウィスカーの添加量を20vol%とすると無添加の場合よりやや高くなる傾向は確認された。機械的特性として常圧焼結体の曲げ強度を測定したところ、無添加の試料では150 MPa程度に留まっていたが、AlNウィスカーを5vol%添加した試料は相対密度がやや低いにも関わらず200 MPaと向上していた。ウィスカー添加試料では破断までのひずみ量が増大しており、その分破断までの応力が増大していることが明らかとなった。
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