研究課題/領域番号 |
15K21424
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
神山 恭平 明治大学, 理工学部, 助教 (50738383)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 支配的リアプノフバンドル / 支配的リアプノフ指数 / 準周期解 / 分岐解析 |
研究実績の概要 |
本研究において扱われるトーラスとはアトラクタのとる解軌道の形状であり、1-トーラスは周期解、2-トーラス以上は準周期解と呼ばれる。準周期解の分岐解析は従来困難とされてきて、ほとんど行われていない。 2入力PLL回路を用いた電子回路実験により2-トーラスの被覆度倍分岐が起こることを示した。加えてサドル・ノード分岐が発生することも示した。具体的にはPLL回路に2つの非共鳴な正弦波の和によりFM変調されたベースバンド信号を入力することにより実現した。SPICEによるシミュレーションも併せて行い、電子回路実験と正規化した微分方程式を用いた数値実験に生じる誤差が実験において用いているPLL内部のVCOにおけるFM変調遅延によるものであることを明らかとした。上記の内容をInternational Journal of Bifurcation and Chaos誌に投稿し、採録が決定している。 離散時間力学系における2-トーラスと連続時間力学系における3-トーラスのすべての局所分岐の解析を行い、例を示した。連続時間力学系の分岐例はすべて具体的な電子回路をもととしている。ここにおいて2-トーラス以上である準周期解の分岐判別法を従来の準周期解の断面である1-トーラス上の支配的リアプノフバンドルの形状によるものから、さらに1次元低い断面である0-トーラス上の支配的リアプノフバンドルにより分類可能であることを示した。上記の内容を「Quasi-Periodic Bifurcations of Higher-Dimensional Tori」という題名でInternational Journal of Bifurcation and Chaos誌に投稿し、採録が決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度において当初の予定通りPLL回路による電子回路実験による被覆度倍分岐の発生に成功した。これに加えて、準周期解の局所分岐理論をn次元へと一般化することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
準周期解の局所分岐の判別方法を従来その断面である1次元トーラスで行っていたが,さらにもう1次元低い0次元トーラス、すなわち点で行うことが可能であることに気付いたため,数値実験による具体的な適用例を挙げ、その有効性を示していく。研究計画の変更として新たに「発振器の結合系による最適化問題の求解」を課題として追加する。これは準周期解の分岐解析にもとづく応用例である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた高次元トーラスである2-トーラスや3-トーラスのリアプノフ指数とリアプノフバンドルの計算に使用する計算機の購入が所属大学に設置されている並列計算機により代替できたことにより次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
所属大学の異動により新たに研究環境を整える必要が生じたため、分岐解析に用いる計算機一式、回路実験に用いる装置を一式の購入予算とする。
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