筋が引き伸ばされながら張力を発揮する伸張性収縮は、短縮性収縮や等尺性収縮に比べて、筋力(MVC)低下、関節可動域(ROM)の制限、遅発性筋痛(DOMS)、骨格筋の腫脹、血中クレアチンキナーゼ(CK)の増加を引き起こす。しかしながら、伸張性収縮による筋損傷のメカニズムは未だ不明な点が多い。そこで本課題では、磁気共鳴画像法(MRI)の横緩和時間(T2)を用いて筋線維の動員を評価した結果、伸張性収縮は短縮性収縮よりも筋線維の動員が少なく、かつ筋損傷の程度が大きいことを明らかにした。さらに、伸張性収縮を繰り返し行うことによって筋損傷が軽減する”繰り返し効果 (RBE)”についても、筋線維の動員との関連を検証した。その結果、2回目に実施した伸張性収縮後のMVCの低下、ROMの制限、DOMS、筋の腫れが1回目の伸張性収縮後に比べて有意に抑制された。さらに、運動直後のT2の上昇は1回目の伸張性収縮に比べて2回目の伸張性収縮後の方が有意に大きかったことを確認した。したがって、本研究によってRBEには筋線維の増加が関わっていることが示唆された。また、本年度は繰り返し効果が、運動を実施していない反対側にも生じる対側繰り返し効果についても検討した。その結果、RBEと同様に2回目の伸張性収縮では運動を実施していない反対側においてもT2の上昇が大きいことを確認した。これらの結果は、繰り返し効果において神経適応が重要な役割を果たしていることを示唆している。
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