研究課題/領域番号 |
15K21427
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
関水 徹平 立正大学, 社会福祉学部, 講師 (40547634)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ひきこもり経験 / 知識社会学 |
研究実績の概要 |
2015年度は、計6名の「ひきこもり」経験者の方たちにインタビュー調査を実施し、「ひきこもり」経験者の方たちの集まるイベントの参与観察をおこなった。これらの調査から得られたデータは、「ひきこもり」経験者の生活史と彼・彼女たちが当事者発信に向かう姿勢に関するものであり、「ひきこもり」経験者の当事者発信とその社会的な背景を理解するための重要な基礎となる。 また、10月8日~10日にかけてアメリカ・アトランタで開催された国際学会 Society for Phenomenology and the Human Sciences にて、"Hikikomori (Social Withdrawal) Experience and Despair of Communication" というタイトルで報告をおこなった。この報告では、「ひきこもり」経験者における「コミュニケーションへの絶望」という語りに、期待されるライフコースを逸脱した自分に対する否定的な意味づけとともに、「それでも自分は間違っていないはずだ、自分はこうとしか生きられなかったのだから」という密かな肯定の思いが込められていることを提示した。「ひきこもり」経験者自身にとって、「ひきこもり」経験は両義的であるが、その両義性を認識することが、彼・彼女たち自身が自分なりの社会との関わりを見出すうえで、また研究者が「ひきこもり」経験者たちの生を理解するうえで重要であることを指摘した。 国内では、立正大学において開催された、第32回現象学・社会科学会大会(12月5日)で「「ひきこもり」経験と<問い>」というタイトルで研究報告をおこない、「ひきこもり」経験者の自伝的著作における<問い>という概念に着目し、そこにみられる両義性についての知識社会学的考察を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「ひきこもり」経験に関するインタビューについては、当初想定していたインフォーマントの協力が得られた。 また、「ひきこもり」関連のイベントについては、日程の都合から、当初の想定よりも参与観察をおこなう機会が減ったものの、おおむね順調に調査を進めることができた。 データの分析結果については、学会報告においてその一部を公表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度において、さらに当事者発信をおこなうイベントでの参与観察、調査協力者の方たちへのインタビュー調査などをおこない、データの収集と分析を進めていく。 また現在「ひきこもり」経験者の方たちへのインタビュー・データに基づいて、「ひきこもり」経験をめぐる知識社会学的考察と、「ひきこもり」支援の望ましいあり方についての考察等を執筆中である。成果は2016年度内に公表する予定である。
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