研究課題/領域番号 |
15K21430
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松尾 美和 (石瀬美和) 神戸大学, 経済経営研究所, 准教授 (80745042)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | パフォーマンス評価 / 事業評価 / アメリカ合衆国 / 交通政策 / 効率性 / 有効性 |
研究実績の概要 |
米国の連邦レベルでの交通政策は、2012年成立の21世紀における発展のための前進法(Moving Ahead for Progress in the 21st Century Act)成立によって、パフォーマンス規定型計画へ移行した。本研究プロジェクトもそれを受けて公共交通のパフォーマンス評価の在り方を考察するものである。2017年度は公共交通のパフォーマンス評価について、その法的・制度的背景を中心に掘り下げた。学術誌で行われている評価手法が実際の政策決定レベルでは利用されていない状況を鑑み、その背景となる政治・経済的状況や技術的な問題点を明らかにすることを主眼として取り組んだ。 具体的には、このパフォーマンス規定型計画の導入の背景には、社会的要求を受けて連邦交通予算が拡大を続けるのに対して自動車燃料税収入が伸び悩み、2008年以降高速道路信託基金の枯渇が大きな問題となっており、補助事業の効率化が急務となっていたことが明らかとなった。また、1990年代から米国政府全体で目標管理の流れがあり、交通資産管理や政府の事業管理の分野ではパフォーマンス評価の経験の蓄積があった。 しかしながら、公共交通のパフォーマンス管理は、経済活性化への貢献や物流網の評価などと同様、現在もまだ何を測るべきかにすら合意が取れていない状況が明らかとなった。パフォーマンス指標は政策の向上に役立てるという目的上、交通当局が十分に影響を与えられるものである必要があるが、アクセシビリティの向上や利用者増加などについては交通当局の影響力は限定的であり、指標としての採用がに至っていない。また、公共交通の運営の効率性や有効性向上も重要な指標であるが、実際の運航事業者の反発や不信感が根強く、それらにつながるような指標は一切含まれていないことも明らかとなった。以上の成果は次年度初頭に論文として刊行される予定となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2015年度から2016年度にかけての研究代表者の移籍・休業に伴い、計画よりも遅れが生じている。また、研究を続けるうちに解析手法の技術的問題や社会的背景の解明の重要性が明らかとなってきたため、より定性的な分析に重きを置く方向に方向転換している。 当初の研究予定とは異なっているが、昨年度は一定の成果を上げており、進捗状況に関しては改善があった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通りである、地方バス事業者の効率性・有効性について定量的解析についても試みるとともに、パフォーマンス規定型計画の運用に関するケーススタディを並行して行う。ケーススタディにおいては、交通事業におけるパフォーマンス管理がどのように効率性・有効性の改善に貢献したか、また、貢献しなかった事例に関してはどのような対策をなすべきかについて掘り下げる予定でいる。定性的分析をより進化させるため、定量的評価については当初予定よりも限定したものとなる予定でいる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者は現在、別の研究プロジェクトにも従事している。そちらの研究費の繰り越しが困難であること、2017年度はそちらのプロジェクトでの成果が多く出ていて各所で成果報告していたことから、当研究費を利用しての活動は限られたものとなった。
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