本年度は、前年度までの研究成果の出版を目指すとともに、フロリダ州の25年にわたるパフォーマンス管理の事例研究を行って成果を国民経済雑誌に公表した。 フロリダ州は全米で交通事業のパフォーマンス管理が要求されるのに20年以上先立つ1991年から交通事業のパフォーマンス管理を行ってきた。本研究では25年以上に及ぶ年度報告書を読み解くことで、モニターする項目の設定や基準の在り方について様々な混乱を経て体系を確立してゆく様子を明らかにするとともに、継続的な改善へつなげるための課題について分析した。パフォーマンス管理の開始直後には、モニターする項目の設定や基準の在り方について様々な混乱が見られたが、2000年以降は安定的にインフラの状態記述や交通安全指標、混雑指標、交通局の事業施行状況などの管理がなされていくようになった。2004年以降では、改善事業の実行数などの入力要素の指標から、インフラ全体の基準達成状態や交通事故発生率などの出力要素や結果の指標へと変更がなされて現在に至っている。 これらのパフォーマンス管理は、一部に関しては成功を収めているが、その他のものに関しては効果に疑問があることも判明した。例えば交通局の事業執行状況に関しては継続的な改善をもたらして、現在では基準を達成するようになってきており、パフォーマンス管理に成果があったことが示唆されている。しかしながら、インフラの状態記述などに関しては、「入力要素計測から出力・結果の計測へ」という流れの中でより達成が容易な基準に改められたうえ、基準値も甘い設定のまま変更されることがなく今に至っている。連邦交通局はMAP-21の制定時のガイドラインにおいて、目標値については「継続的な改善をもたらすものに努力して設定するべき」と述べているものの、現実的には目標値の設定を自治体自ら厳しくしてゆくということは行われにくいのであろうことが明らかになった。
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