本研究では「分位数回帰モデルの有効推定」を起点として、その応用について取り組んでいる。起点としている有効推定では、分位数回帰モデルの母数は関数として捉える必要があることに着目して、関数空間での考察を与えている。具体的には混合分布モデル(mixture model)とZ推定量の理論から捉え直すことで、より包括的な枠組みの下で統計的推測の有効性を求めた。 最終年度である本年度は、これまでの結果の投稿準備と研究過程でみつかった幾つかの問題点の調整を行った。初年度に得た結果、すなわち分位数回帰モデルのランダム係数(random coefficient)表現を一種の混合分布モデル(mixture model)とみなすことによる包括的な枠組みの下で統計的推測の有効性について、より簡明な表現と一般化ができることも判明したので、これまでの結果も含めて再調整を行った。現時点ではこれらを雑誌掲載という形に間に合わせることはできなかったが、随時、結果として表に出せるよう必要な修正を行っている所である。 また、昨年度の研究過程において、本研究の基礎となる結果を金融分野での数理計画問題の解を統計的に改善した際、いわゆる運用戦略における分位数の新たな役割も明らかになった。それは変動のリスクを管理するという従来の役割に留まらず、我々が保持しているポジションの評価への新しい視点を提供するものである。そしてこれは非対称絶対損失を持つ確率システムの制御へと一般化される話題でもある。これは本研究課題からは逸れる話題にはなるが、新たな研究課題へと繋がる本課題の大きな収穫となった。
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