加齢に伴い、生体内の抗酸化能力が低下し酸化ストレスが増加する。一方で、定期的な身体活動や運動習慣は生体内の酸化・抗酸化制御機構を改善する。近年では、身体不活動・座位行動が生活習慣病をはじめとする様々な疾患の発症リスクと関連が指摘されているが、酸化・抗酸化制御機構に及ぼす影響は明らかではない。昨年度までに日常的な身体活動量を増加させ、身体不活動・座位行動を減少させる介入研究を実施し、安静時の酸化ストレスならびに抗酸化能力指標への影響を検討してきた。介入により歩数ならびにMVPAが有意に増加し、身体不活動ならびに座位行動も減少傾向を示したが、酸化ストレスならびに抗酸化能力に及ぼす影響は認められなかった。本年度は、心血管疾患あるいは糖尿病発症との関連が指摘されている食後酸化ストレス指標に着目し、日常的な身体活動、身体不活動ならびに座位行動が食後の急性酸化ストレスに及ぼす影響を検討した。閉経後女性28名を対象に空腹時ならびに一過性の食事負荷後に採血を行い、酸化ストレスならびに抗酸化能力を評価した。それらの血中酸化ストレス・抗酸化能力指標の変動と日常的な身体活動量、身体不活動、座位行動との関連を検討した。また若齢者10名にも同様の検討を行い、若年者と高齢者の食後酸化ストレスならびに抗酸化能力の変動の比較も行った。加速度計のデータから歩数および中等度強度以上の身体活動量(MVPA)、身体不活動、座位行動の時間を算出した。若齢者および高齢者ともに一過性の食事負荷時に酸化ストレス指標が上昇し、抗酸化能力が低下したが、日常的な身体活動量、身体不活動、座位行動との関連は認められなかった。今後、若齢者あるいは高齢者を対象に身体活動あるいは座位行動を減らす介入研究を実施し、食後酸化ストレスとの因果関係を検討する必要がある。
|