研究課題/領域番号 |
15K21444
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
下澤 東吾 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (00386608)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | αカテニン / 細胞接着 / アクチンフィラメント / 多量体形成 / 蛍光イメージング |
研究実績の概要 |
αカテニンのカドヘリン・カテニン複合体(CCC)における機能については多くの報告が存在するが、細胞内での他の機能やダイナミクスについては不明な点が多い。例えば、これまでαカテニンは細胞質中では主に2量体で、CCCでは単量体で存在するとされていたが、近年ではCCCでも2量体であることが示唆されている。そこで、2量体形成依存的に蛍光能を発現するプローブを用いてCCCでのαカテニンの2量体形成の有無を明らかにすることを目的として実験を行った。CCC内でのαカテニンの機能を阻害しないサイズの小さなプローブの検討と、発現ベクターの構築を行った。他にも、αカテニンは核内で転写抑制に関わることが示唆されているが相互作用する因子の詳細は不明である。そこで、核内でのみ活性化するビオチン修飾酵素をαカテニンにラベルすることで、核内での相互作用因子の同定を目的として実験を行った。具体的には、オプトジェネティクスで使用されるLOV2ドメインとビオチン修飾酵素を融合して光制御型ビオチン修飾酵素とし、核内でのみ光照射することで部位特異的な相互作用因子の同定を狙った。これまでに光制御型ビオチン修飾酵素の遺伝子配列デザインと発現プラスミドの構築を行い、遺伝子配列のスクリーニングを大腸菌発現系により行ったが、現在までには所望の特性を持つ変異体は得られていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
課題採択後に、αカテニンとアクチン繊維との張力依存的な結合についての報告があり、これは計画していた実験内容のほぼ全て含む詳細なものであった。そのため申請書内でも記述していたように研究対象を、αカテニンのCCCでの多量体形成の有無および核内での相互作用因子の解析へと移すこととした。これまでに、2量体依存的蛍光プローブの検討を行い、発現ベクターの構築を行った。また、核内での相互作用因子を同定するために、オプトジェネテイクス技術を利用した局所活性化が可能なビオチン修飾酵素の遺伝子配列のデザインと発現ベクターの構築を行い、大腸菌発現系により遺伝子配列のスクリーニングを行った。
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今後の研究の推進方策 |
CCC内の2量体形成の有無については2量体形成依存的蛍光プローブをラベルしたαカテニンをMDCK等の単層上皮細胞に導入して顕微鏡観察し、細胞接着領域の蛍光シグナルの有無を確認する。細胞接着部分に蛍光シグナルが認められ、すなわちCCC内でも2量体形成が示された場合、細胞接着形成とαカテニン2量体形成の関係に注目する。例えば、レーザー照射法により細胞シートから一部分の細胞を除去すると、近接した細胞内では力学的バランスが崩れて細胞接着の再構成が発生する。この再構成時にCCC内のαカテニンがどのように振る舞うかをタイムラプス観察により解析する。核内でのαカテニンの相互作用因子については、スクリーニングによって所望の活性を持つビオチン修飾酵素が得られ次第、細胞に導入して相互作用因子の解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
課題採択後の研究情勢の変化を受けて、申請段階で計画していた精製タンパク質の光学顕微鏡下での顕微操作実験から、培養細胞を用いる実験へと研究計画の重点を移した。そのため、高額な部品を必要とする光学顕微鏡の改良に先んじて、まずは遺伝子ベクターの作製などを行う必要が生じ、主に分子生物学用の消耗品の購入が中心となったため、当年度の予算を蛍光顕微鏡観察が主となる次年度に使用する必要性が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
培養細胞へのベクター導入試薬、蛍光ラベル抗体、蛍光観察用の光学フィルター、顕微鏡観察用のガラス用品に使用する。これらは単価が高価なうえに複数回購入するため合計は高額になる。また、顕微鏡観察用の画像解析装置や、核内での相互作用因子の同定用にプロテオーム解析の外注費、にも使用する。翌年度の請求分は日常的に必要となる細胞培養用の試薬、細胞培養用プラスチック機器、分子生物学用の試薬などで使用する。
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