研究課題/領域番号 |
15K21445
|
研究機関 | 公益財団法人東洋文庫 |
研究代表者 |
加藤 恵美 公益財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (60434213)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 多文化共生 / 在日朝鮮人 |
研究実績の概要 |
本研究は、東日本大震災(2011年)で被災した仙台の朝鮮学校(東北朝鮮学校)が再建されない原因についての考察を、阪神・淡路大震災(1995年)の被災後直ちに再建された神戸の朝鮮学校を対照事例として、(1)朝鮮学校/民族コミュニティに内在する原因と、(2)朝鮮学校と地方自治体及び日本政府との関係に存する原因、という2つの観点から深めることを目的としている。 本研究は2年で完結させることを目指し、1年目(平成27年度)の焦点は、再建過程の前史、すなわち神戸・仙台朝鮮学校の設立以降、被災までの歴史の検討であり、その一方で、2年目(平成28年度)は、再建過程それ自体を検討の焦点とする計画であった。これまでの研究は、概ねこのような計画に則り進められてきたが、後で詳しく述べるように、社会への成果の発信を目的として、本研究は全体として3年で完結させる研究に変更された。 本年度(2年目)の研究実績としては、次の4点を挙げることができる。第一に、朝鮮学校の再建に関するフィールドワークの遂行である。神戸と仙台の両地域で、関係者へのインタビューを実施し、現地の公立図書館等での資料収集も行った。第二に、日本社会学会大会での研究成果の報告である。そこでは、論文執筆に向けて大変有意義なフィードバックを得ることができた。第三に、論文執筆の着手である。フィードバックを踏まえて、まずは一つの論文を、在日朝鮮人の「少数居住地域」に位置する東北朝鮮学校の独特の経験に焦点を絞った歴史研究として完成させることを目指し始めている。それは、1年目の研究の気づき(東北の朝鮮人コミュニティに関する歴史研究の不在)を踏まえたものでもある。第四に、そうした狙いに基づいて、東北朝鮮学校創設当時(1965年前後)の「朝鮮新報(エスニック・メディア)」及び「河北新報(地方紙)」の記事を網羅的に調査した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の4つの成果から、本研究は概ね順調に進展していると判断できる。昨年に1年目を振り返り示した「今後の研究の推進方策」に基づいて、2年目は朝鮮大学校図書館における資料収集を強化し、特に「朝鮮新報」の記事を徹底的にレビューした。その調査にあたり協力を得た朝鮮大学校の大学生に謝金を支払った。その一方で、聞き取り調査に対する謝金(予算として計上していたもの)の受け取りを辞退されたインフォーマントが多かった。本研究を3年計画に延長したのはそのためであり、資金は次に述べるように有意義に活用する。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度については、研究成果の発信に注力する。研究論文の発表に加え、社会の問題意識を喚起するために、朝鮮学校関係者も招いて、仙台で本課題に関するセミナーを実施する。セミナー実施にあたっては、東北学院大学で朝鮮文化研究を行っている松谷基和先生から協力の内諾をすでに得ている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
生じた次年度使用額は、主に、先に述べたようにインフォーマントのほとんどが謝金の受け取りを辞退されたことによるものである。また、聞き取り調査について、私が仙台や神戸に行くだけでなく、朝鮮学校の関係者が校務で東京に来る機会を捉えて行うことを意識したことで、かなり経費を抑えることができた。
|
次年度使用額の使用計画 |
これも先に述べたように、仙台でのセミナー実施のために大部分を用いる予定である。その実施にあたっては、在東京、在神戸の朝鮮学校関係者の旅費等をカバーする。
|