本研究は、東日本大震災(2011年)で被災した仙台の朝鮮学校(東北朝鮮学校)が再建されない原因についての考察を、阪神・淡路 大震災(1995年)の被災後直ちに再建された神戸の朝鮮学校を対照事例として、(1)朝鮮学校/民族コミュニティに内在する原因と 、(2)朝鮮学校と地方自治体および日本政府との関係に存する原因、という2つの観点から深めることを目的とした。 本研究は、3年間で完結させることを目指したものであり、1年目(平成27年度)には、再建過程の前史、すなわち神戸・仙台朝鮮学校の設立以降、被災までの歴史を検討し、2年目(平成28年度)には、再建過程それ自体の検討を行った。そして3年目(平成29年度)は、これまでの研究を通じて得た知見を発信することに注力した。 本年度(3年目)の研究実績としては、次の3点を挙げることができる。第一に、2年目に行った日本社会学会大会での報告を踏まえて論文を執筆し、同学会誌に投稿を済ませたことである。投稿前には、論文で引用した口述記録の内容確認をインフォーマント(東北朝鮮学校関係者)と共に行った。第二に、今後の研究のインスピレーションを得るために、他の研究者との交流を深めたことである。具体的には愛媛大学の魁生由美子先生にご案内いただいて、四国朝鮮学校を訪問し、他の研究者と共に聞き取り調査を行った。第三に、日本国際文化学会での報告である。そこでは、本研究を通じて得た知見をもとに、大学生の教育(演習など)に応用する方法を提案した。
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