研究実績の概要 |
1.体性感覚型バイオフィードバック(BF)による介入効果の検証 本研究では,昨年度実施した予備実験の結果を受けて,9名の脳卒中片麻痺患者に対して,1か月間の介入効果を検証した.慢性期脳卒中患者を対象に,典型的なバランストレーニングに加えて,1)静止立位フォームラバー上でのBFトレーニング,2)麻痺側荷重位でのBFトレーニングの2つを実施した.1か月間の介入の結果,介入前後において姿勢動揺を示す指標(95%信頼楕円面積,動揺距離)の低減が得られ,機能的バランス指標(Berg Balance Scale,Functional Reach Test, Timed up and go test)に有意な改善を認めた.これらの結果から,体性感覚型BF装置を用いたバランストレーニングは,有効にバランス能力を改善させ,それは機能的バランス指標まで汎化できることが分かった. 2.歩行知覚支援システムの構築に関する予備的研究 本研究では,これまでの脳卒中バランス障害に対する体性感覚型BFの効果に基づいて,歩行時の麻痺足感覚入力の減弱を補完するBF装置の臨床モデル開発と予備試験を実施した.歩行用体性感覚型BFでは,足接地部位をベスト型振動呈示ユニットを用いて患者に呈示する機構とした.2名の脳卒中片麻痺患者に対して,BF適応過程を評価するため装置を用いた歩行トレーニングを3日間実施した.その結果,患者Aにおいては3日目,患者Bにおいては2日目から重複歩距離が有意に増加し,結果として歩行速度が向上した.一方で,適応初日は両患者ともに歩行速度は低下していた.これらの結果から,体性感覚型BFを用いた歩行トレーニングは,適応過程に時間を要するものの,比較的短期間で歩行効率を向上させることが示唆された.今後は本結果を受けて,さらに患者数を増やし応用可能性を検討する.
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