研究課題/領域番号 |
15K21447
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
山本 真理 早稲田大学, 付置研究所, 准教授 (00743212)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 会話分析 / あいづち / 受け手の反応 / はい / うん / インタビュー場面 |
研究実績の概要 |
今年度は以下の研究成果を得た. (1)日本語のあいづち表現として最も一般的に使用される「うん」「はい」の使い分けの特徴について,実際のデータに基づき分析を行った. (2)(1)について,日本語第二言語話者(以下,L2話者)のインタビュー場面についても検討を行った. (3)データ収集 (1)により,ある特徴的な環境のもとでインタビューの受け手が「うん」を基調とした反応から,「はい」に切り替えることがわかった.その環境とは,インタビューの話し手がなんらかの発話の途中で,受け手の理解のためにことばの説明を挿入的に挟む環境である.受け手は,こうした話し手の発話の構造化を捉え,挿入的になされたことばの説明が完了することが認識可能となると「はい」による反応を行い,それによって自らに向けて話し手が説明を挟み,受け手自身がそれを理解したことを示していた.また,(2)によって, L2話者は日本語母語話者が使用する「うん」「はい」とは異なる形式を用いているものの,日本語母語話者が「はい」を用いたのとほとんど同様の発話位置で,それまでの反応とは差別化された形で反応を行っていることがわかった.また,L2話者の会話においては,「はい」を基本とする反応が行われることが多く,母語話者の「うん」から「はい」への切り替わりがほとんど観察されないこともわかった.以上の研究成果によって,受け手が「うん」「はい」の使い分けを丁寧さ以外の観点からも記述し,日本語教育の現場でも指導していく必要性があることが示された.さらに,(3)で収集した主なデータは雑談場面(6時間分・2015年10月,11月収録)と, L2話者のインタビュー場面(2時間分・2015年12月収録)であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分析は概ね順調に進んでいる.平成27年度はに予定していた制度的場面でのデータ収録が十分にできず,平成28年度に予定していた雑談場面の収録を前倒しで行った.平成28年度は当初予定していた制度的場面(特にインタビュー場面)におけるデータ収録を行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
・データ収録:平成27年度は当初予定していた福島の自立支援施設でのデータ収録ができなかったが,L2話者のインタビュー場面(2時間分)の収録を行った.加えて,平成28年度に予定していた日常会話場面(主に雑談場面)のデータ収録を前倒して行った.平成28年度は,当初予定していた制度的場面(特にインタビュー場面)におけるデータ収録を秋田および福島において行う予定である.また,万が一収録が不可能となった場合には,東京都内においてインタビュー場面を模擬的に設定の上収録する.インタビューの協力候補者(末澤氏および,中野区商店街)には既に口頭にて打診の上,承諾を得ている. ・収録したデータの書き起こし,整理を行う. ・分析:分析の観点は主に次の3点である.(1)インタビュー場面に見られた「うん」「はい」の使い分けの特徴が,日常会話場面においても同様に当てはまるのか検討する.(2)「うん」「はい」以外の形式の使用や身体的動作を含めた受け手の反応の種類を調べる.インタビュー場面の分析に加えて,収録済みの雑談場面を対象に検討する(3)特に,「うん」から「うんうん」のような複数回形式が用いられるのはどのような位置においてかを検討する. ・研究成果の発表:研究会(東京,関西,北海道)でのデータ検討および発表,学会(社会言語科学会9月,3月)での発表を行う.国際学会への応募も行う.成果の一部を論文にまとめ,社会言語科学会に投稿・掲載を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に行う予定だった日常会話場面のデータ収録を前倒して行った.そのため,旅費および謝金の支出が予定よりも少なかった.また,収録したL2話者のデータ収録は,授業の一環で行ったため謝金が発生しなかった.研究会についても平成27年度は東京で行われている研究会(CAWG)の会場提供を行うこととなり,毎回参加する必要があった.そのため,北海道や関西へ出向く機会が減り,旅費がかからなかった.さらに,年度の後半,研究会・学会への参加機会が予定よりも少なくなった主な理由には,妊娠出産に関わる疾患のために急遽入院期間が発生したことがあげられる.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は当初平成27年度に予定していたデータ収録を行うため,福島や秋田への旅費,研究協力者への謝金の支払いが必要となる.また,データ検討のため北海道や関西で行われている研究会に参加し,学会発表を行うための旅費が必要となる.データ収録完了後には,データの書き起こし作業のための人件費が予定よりも多く必要となる.これらに加え,研究室で使用している分析用のパソコンの電源アダプタが故障しており,今後パソコン自体を新たに購入する予定である.
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