本研究は、ケト基を糖部に有するケト糖型核酸の合成の開発とケミカルバイオロジーへの展開を目指すものである。本年度は、前年度より継続しているケト糖型核酸の合成とその分光学学的性質を検討した。さらに、ケト基の反応性を利用したポストRNA化の基礎検討を行った。また、ケト糖を含む核酸の詳細な構造を決定すべく、X線結晶構造解析に利用可能な結晶を得るための結晶化実験を実施した。。 ケト糖型ウラシルを導入したDNAの熱的安定性は、リボース型、あるいはデオキシリボース型のコントロールと比較して、安定性は大きく低下することがわかった。CDスペクトルにて構造を検討したところ、大きな構造変化は観測されなかった。おそらく、糖部のケト化により局所的に構造が変化しているものと考えている。現在のところ、X-線結晶構造解析に適用できる結晶を得るには至っていないが、今後も継続する予定である。ケト基の反応性を利用した核酸のポスト合成の基礎研究として、還元反応を利用した水酸基への変換反応を検討した。その結果、水溶液中、還元剤を作用させるとケト基が水酸基へと変換できることがわかった。この還元反応は、アラビノ型とリボ型が得られるはずである。得られた還元体を酵素分解によって、ヌクレオシドまで分解した。組成を分析したところ、リボース型がアラビノ型と比較して優性に得られた。
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