研究課題
近年,抗菌光線力学療法(antimicrobial PDT; aPDT)が歯周病治療へ応用され注目を集めている。aPDT の代表的な方法は,標的細菌を染色し光を当てることで生じる活性酸素種を利用し殺菌するものである。しかし,従来型aPDT は開業医主導の臨床報告が主であり,詳細な殺菌メカニズムや安全性に対する基礎的研究はほとんど行われていない。加えて歯周病に対するaPDT の治療ガイドラインの設定にも至っていないため,早急にaPDTによる殺菌メカニズムの解明と宿主細胞への影響が認められない方法の開発が急務であるため,本研究課題を遂行するために以下の研究を行った。in vitro X-band electron spin resonance (ESR; 電子スピン共鳴) 法を用い,歯周病原細菌が取り込む色素を光励起することにより産生される活性酸素種の探索と同定を行った。また,この産生される活性酸素種における至適励起波長の探索を行った結果得られた至適波長は青色光でありまた得られる活性酸素種は一重項酸素であることを同定した。さらに光の出力および色素量の変化に伴う活性酸素種の産生量の変化をin vitro X-band ESR法を用いて検討した。加えて歯周病原細菌に対する効果の検討を行う前段階としてEscherichia coliとStaphylococcus aureusを用い,細菌に対する色素の影響をColony Formoing Unitを用いて,色素のみでは細菌に対し直接的な影響がないことを確認した。同様に光照射のみでの殺菌効果を出力を変化させて検討を行い10Jまでは光照射単独による影響を受けないことを確認した。
2: おおむね順調に進展している
当該年度は歯周病原細菌が取り込む色素であるポルフィリンにより生成される活性酸素種の解析を行うことが目標であった。よって,活性酸素種の特定および至適光波長の探索および特定が行えたことより概ね順調に進展していると考えます。
当初の計画通り,歯周病原細菌が取り込む色素であるポルフィリンと光励起による歯周病原細菌の殺菌効果の解析を行い,これら研究計画によって実施された研究結果内容を欧文雑誌に投稿するため論文執筆および広く国内外の学会にて発表していく予定である。
当該年度に歯周病原細菌の細菌株を購入する予定であったが,購入を次年度に回したため,細菌株および細菌培養に関わる消耗品および生化学的測定における試薬等消耗品に関しても当該年度に購入しなかったため。
当該年度に購入を行わなかった細菌株および試薬等の消耗品の購入以外は当初の予定通りの使用計画である。よって消耗品120万,旅費(学会における成果発表(国内外)50万円),その他(論文投稿に関わる雑費 30万円)を計画している。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
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