本研究課題では、パッシブ建築物における自然換気効果予測手法についての検討を実施した。最初の2年間において得られた結果は、以下の通りである。 1.密集市街地におけるグロス建蔽率(密集度)の違いが、建物風圧係数差に及ぼす影響について検討を行ない、建物配置の違いによる風圧係数差について示した。 2.ダブルスキンを備えたパッシブ建物における実測とシミュレーションを行い、中間期における効果的な運用方法について検討した。特に、風力換気と温度差換気のハイブリッド自然換気が可能なダブルスキンにおいて、開口パターンによる室内PMVの変化や上部に溜まった熱の除去効果等について成果を得た。ダブルスキンにおける風力換気のポテンシャルを把握するために、ダブルスキンを設置した建物のCFD解析を実施し、ダブルスキン流入口・流出口、建物壁面における風圧係数分布を取得し、ダブルスキン内における自然換気ポテンシャルを示した。また、ダブルスキンの流入出口を開放した場合のCFD解析を実施し、インナースキン側の風圧係数分布について検討し、風向角によらず、インナースキンはその多くが負圧となり、建物壁面の風圧係数との差が確保できることがわかった。このことより、多くの風向において、室内へ風力による通風効果が見込める事が想定される。 最終年度においては、以下の成果を得た。 1.ウインドキャッチャーによる自然換気効果予測のために、ウインドキャッチャー設置前後における風洞実験及びCFDを実施し、ウインドキャッチャーによる風圧力増加効果について検討を行なった。ウインドキャッチャー設置前の建物接線方向動圧が、設置後の風圧力増加にどの程度寄与するかの変換効率(係数)を求め、グロス建蔽率別に整理した。また、建物接線方向動圧分布測定を行い、代表的な建物形状における分布を取得した。
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