研究課題/領域番号 |
15K21459
|
研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
神谷 克政 神奈川工科大学, 基礎・教養教育センター, 准教授 (60436243)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ナノ・バイオ系 / 反応場 / 量子論的シミュレーション / プロトン移動 |
研究実績の概要 |
産業・製薬分野での応用がはじまっている酵素タンパク質は、その反応場に優れた触媒特異性を持つが、より一層の活用には使用目的に応じた反応場の制御が重要な課題である。本研究では、タンパク質の反応場が駆動する反応機構を量子論的シミュレーションにより解析し、反応場の構造と機能の相関関係を電子論的観点から原子レベルで解明する。さらに、生体分子以外のナノ物質の反応場も同アプローチで解析することで、タンパク質がつくる反応場とナノ物質の反応場の共通項と相違点を解明すると同時に、ナノ・バイオ物質群がつくるナノ反応場を統一的に理解するためのフレームワークを提唱することが、本研究の目的である。 本年度は、ナノ物質中の反応場の重要な例として、次世代パワーデバイスの候補の1つであるSiC-SiO2を取り上げた。SiC/SiO2系において、水素アニーリングは欠陥を抑制する効果があるが、これによりデバイス特性を悪化させる何らかの可動性の陽イオンが生じる欠点があった。一方、SiC/SiO2系の界面付近には、CO3様の欠陥が生じていることが我々の過去の研究から予想されていた。タンパク質の反応場と比較すると、CO3は周囲の環境に応じて水素イオンの授受を行なう可能性がある。そこで、SiC/SiO2系の可動性イオンが水素イオンであるかどうかを、量子論的シミュレーションの手法により解析した。その結果、可動性イオンは水素イオンであり、電圧を加えることで、CO3様の欠陥からSiO2中のバルク中へ水素イオンが移動してデバイス劣化を引き起こすことがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度予定していた計算機を導入してテスト計算を行なうところまで進んでいるが、計算機のセットアップに多くの時間を費やしてしまった。
|
今後の研究の推進方策 |
タンパク質の反応場の例として、ウリジン-シチジンキナーゼを取り上げる。この酵素は、ウリジンとシチジンのリン酸化を触媒し、核酸の分解によって生じた塩基などがヌクレオチド合成に再利用されるサルベージ経路において重要な酵素である。この酵素の反応場における基質特異性の研究を進める。さらに、ナイロン副生成物分解酵素によるナイロン副生成物やエステルの分解/合成反応において、異なる反応場における種々の反応活性種や中間体の同定も行う。本酵素の特徴である反応場の動的変化と、種々の基質分子に対する分解/合成反応との相関関係を、第一原理分子動力学法により解明する。ナイロン副生成物やエステルなどの様々な基質に対する当該酵素の反応機構を、異なる反応場中でそれぞれシミュレートして種々の中間体を同定する。得られる自由エネルギー活性化障壁を実験値と比較し、計算結果の妥当性を検討する予定である。さらに、上記以外のナノ・バイオ系の反応場に対する解析も進めていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品購入時に端数が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度の物品購入に充てる。
|