次世代超音波医療診断にとって重要な技術課題である高周波超音波プローブの開発を行った。アレイ化された圧電結晶を用いて超音波の送受信を行う場合、圧電結晶の超音波送受信感度が最も重要になる。そこで高周波での超音波イメージングが可能となるよう水熱合成法による圧電結晶膜の低温製膜方法を新たに提案し、膜厚み2μmの高品質なKNbO3/PTiO3膜を得た。得られた圧電結晶膜を背板と音響レンズに取り付け、中心周波数45MHzの高周波超音波用のシングルプローブを試作した。実際に超音波イメージングを行い提案した手法による性能評価を行った。 試作したシングルプローブについて、水中において指向性、波送信感度を測定したところ、方位分解能と距離分解能は現時点で約60μm、送受信時のS/N比は40dBであった。実験セットアップの都合上の限界値であったが、中心周波数を100MHz以上に設定することで超高周波超音波プローブの実現が可能であることを示した。 これを用いてメカニカルスキャンによる超音波イメージングでは、2㎜角程度の範囲で解像度の高い3D超音波イメージング画像を得た。例えば、眼球内の虹彩裏面や毛様体までの精密な組織構造、皮下腫瘤の観察、乳腺の線維腺腫の分布等の観察が期待できる結果である。 高速に3D超音波イメージング画像を得るためには、高感度な圧電結晶の特性を維持した状態でアレイ化する必要がある。そこで、プリンテッドエレクトロニクス技術による電極配線方法の提案を行った。配線に関する実験条件を企業と共に実験を行い、最終的にKNbO3膜面状に配線した電極のピッチ間は100μmとなった。更に条件を詰めることにより、ピッチ間20μmが期待でき、高周波用アレイの実現が可能になると予測されたことから、本実験専用の微細電極形成用インクジェットヘッドのセットアップを構築した。
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