今年度は、明治0年代の議事機関の事例蓄積のために、明治3年11月から5年8月まで県議会が開設され、各郡に郡中議事者が任じられていた柏崎県の関係史料の調査を長岡市立中央図書館文書資料室にて行った。調査では、郡中議事者について記されている「議事諭論」を収録する明治3年『庚午私記』(鈴木家文書)や、明治初年の柏崎県の「御布告留」(今井家文書)、近世に長岡藩北組の割元庄屋をつとめていた鈴木訥叟の日記(明治期分)を調査した。また翻刻史料として長岡市史双書No.36『三島億二郎日記(2)―廃藩置県前後―』も調査した。 また、柏崎県がのちに合併されて成立する新潟県は、開港場・新潟を管内に含み、また戊辰戦争では主たる戦場の一部となったことから、その成立までに複雑な区画の変遷を経ている。そこで、明治0年代の柏崎県及び新潟県、周辺県の政治的動向を整理するために、『新潟県史』『柏崎市史』『長岡市史』などの自治体史や、今泉省三『長岡の歴史』などの地方史の研究成果を調査した。これによって、柏崎県時代から新潟県成立までの政治状況を整理し、把握した。 また同時期に設置されていた他府県の議事機関の動向を知るために、『京都府百年の資料 一政治行政編』や『長野県史』の調査も併せて行った。 関連する隣接研究分野の文献集約も進めた。近代日本における地方議会にかかわる研究だけに限定せず、本研究の意義である「近代日本における政治的主体の形成」という観点に沿うよう、(a)比較史的観点から日本以外の研究、(b)通史的観点から日本の前近代史研究、を集約の基準とし史料分析の総合的な位置づけの準備を行った。
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